小説 | ナノ


◎企画からいらした方へ

この作品は鴆成り代わりです
成り代わりが苦手な方はご遠慮ください
大丈夫な方のみスクロール(名前変換はこちらで)
















この命が尽きたとて
構いやしない

死ぬならあんたを
守って死んでやる

あんたは私を守って
くれたから

それが盃を交わした
義兄弟というものだから

すべての我が意はあんた
の命ずるままに


その己の持つ猛毒故に体が弱く、軟弱、短命と他の妖怪達に虐げられてきたその妖怪の少女──麗は薄く笑みを浮かべてリクオを見る

リクオはその笑みに、ぞわりとした何かを感じた
背中に寒気が走ったようだ

(これは…)


リクオはこれが、この感覚が何か知っている

そう、これは畏れ≠セ
リクオはこの少女を畏れたのだ

(俺が?なんでだ?)

リクオには分からない

一派の組長ではあるが、下手をしたら四分の一しか妖怪の血を受け継いでいない、夜にしか本領を発揮できないリクオより弱いかもしれないこの少女を自分が畏れる理由が

だが、確かにリクオはこの少女を畏れた

「ねえ、リクオ」

リクオの手に病気的なまでに白い手が触れる。その温度は低い

「…なんだ?」

「私は弱い。それこそ自分の毒に殺られるくらいに」

にっ、と笑みを深める麗の紅い瞳が同じリクオの紅い瞳を見透かすように見つめる

リクオは彼女の意志が分からず目を細めた

「何が言いたい?」

そう問えば麗はクスクスと笑い

「…そんな弱い私でもね、あんたの後ろでは」

あんたのためなら、すべてを殺すことが出来るくらい強くなれる

そう言う麗の目は狂気的な言葉とは裏腹に美しいほど澄んでいて
まるでこの世の汚れを知らぬ子供のようで

(ああ…なるほどな)

リクオは笑みを浮かべ、麗の鳶色の髪を指で鋤いた

「リクオ?」

その行為に不思議そうに首を傾げる麗
だが、表情は心なしか嬉しそうだ

そんな彼女にリクオは言った

「麗…お前は弱くなんてねえよ」

少女はリクオを畏れさせた

いつか妖怪達の上に立つであろう彼を

その生まれたばかりの赤子ような心が持つ、純粋で、けれど震えるような畏れで

リクオの笑みが深まる

(そんなやつが、俺の百鬼夜行に)

俺の後ろにいる

そう考えると笑みが止まらなかった



あなたの心はなぜそんなにも透き通っているのか
(あまりに綺麗で恐ろしくて)
(惚れてしまいそうだ)

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「曰はく、」様に提出させていただきました