50.その男、泡沫の如く 少年は一人でした いつだって一人でした 少年は漆黒の髪と短い刀を持ち、雪降る、陽の射さないこの廃れた街で唯一の人でした その目に光はなく、ただ虚無を見つめていました。それでも少年は自ら死ぬことはしませんでした この絶望の街でただ一人で生きていました 少年に親はいません いえ、いる、もしくはいたのでしょうが少年は知りません。知ることはできません でも、少年は知ろうとは思いませんでした 知ってもどうしようもないのだと知っていたから 知っても無駄だと だから、自分を捨てただろう親を知りたいとも、会いたいとも思いませんでした そうして、少年は生きていました 時に現れる化け物のような─悪魔≠悪魔≠ニ知らずに倒しながら ただ、絶望することも、死ぬこともせずに そんな少年の前に、ある日一人の男が現れたのです。 その男は、祓魔師でした。 死にたがりマイラヴァー (故に、死ねない) prev:top:next |