成り代わり | ナノ






白哉成り代わり




男主


力の無さ。それほど悔しいものなんてなかった。
愛した人間一人守れず、今、彼女との約束さえ破ろうとしている。

バッサリと切ってしまった、昔、長かった髪が揺れる。守るためには必要ないそれはある意味覚悟のつもりだったのかもしれない。
…ただ、けじめをつけたつもりでいたかっただけかもしれないが。

俺の目の前に立つ旅禍。たしか名前は黒崎一護だったか。ルキアを救うためにわざわざ乗り込んで来たというじゃないか。

…あの時、無力を見せつけてやったつもりだったが。おそらく、こいつは何度倒したって立ち上がってきやがるだろう。その姿が、ルキアが慕っていたアイツに重なる。

…なぜだ。

なぜ、諦めない。
なぜ、ルキアのためだけに、ここまでできる。卍解まで会得して。黒崎を見据える。ああ、無性に苛立つ。なぜ、そんなに強い目をできるのだ。

「なぜ、お前は…何度もルキアを助けようとする」

そう問えば、逆になぜ、ルキアを助けようとしないと返され思わず嘲笑が浮かぶ。兄貴のくせに、なぁ。
ああそういえばこいつは何も知らないのか。

「助けない?…」

助けたくないわけない

「ふざけるなよ?」

お前が俺の何を知っている

「ふざけるな!!」

「っ…」

怒鳴れば零れる霊圧に黒崎の顔が驚きに歪む。その黒崎をきつく睨む。じわじわと怒りが、否、苛立ちがせり上がってくるのが分かる。

ふざけるな。
お前に何が分かるというのだ。この背中にある“朽木”の意味が。

「てめぇなんぞに分かってたまるかよ…!」

お前に何が分かる
この苦しみが

助けたいのに助けられないという苦しみが

分かるわけ、ない

愛しい存在がすべてなくなっていく、この気持ちが


分かるわけないんだよ



どうせ聞き入れられない願いなら口にするだけ無駄だってもうひとりの僕は主張するけれど

本当は助けたい

それが彼女との約束

けれど

掟が俺を縛るのだ



囚われがんじがらめ
(高潔の人は懐うのだった)

……
アンケートより
…すみません男主で