成り代わり | ナノ
一護成り代わり
何かを護ること。
今まで、ただ庇うことしかできなかった。でも、今までならそれで十分だった。
喧嘩なら、そこそこできた。ユズも、カリンも守れた。けど、そのたびに父さんに怒られた。
女だからって
「そんなの、関係ないのにねー」
「いや、関係なくないだろ」
そうか?
恋次の言葉にそう首を傾げたら、恋次は呆れたようななんとも言えない顔をした。厳つい顔をしてるくせになんだか可愛く思えた。
なんて絶対口に出さないけど。
代わりに口に恋次がくれたたい焼きの頭を食む。
すると、恋次が唐突にぐしゃぐしゃと私の頭を撫でた。掻き回した、の方がただしいかもしれないけど。
突然すぎて、うわ、と声をあげる。
なんなんだ。
そんな疑問も込めて恋次を見上げるけど、当の本人はなぜかそっぽを向いている。ホントなに。
「…恋次?」
「あのよ、お前が強いのは知ってるぜ?」
「うん、恋次も倒したし」
「うるせぇ。…まぁ負けたけどよ。そうじゃなくて、お前は確かに強いかもしれねぇが…」
「?」
そこまで一気に言って、黙る恋次に再度首を傾げる。なんだか言いたいことは分かるような気がしたけど、敢えて言わない。
彼の口から、聞きたい、からとか。
ただ、言葉を探している様子の恋次の言葉を待つ。
しばらく待つと、彼は言葉を見つけたらしい。
息を軽く吸って口を開く。
「お前は強いけど、頼ったっていいんだからな」
「え」
「俺だって、弱くはねぇんだからよ」
未だにそっぽを向いたまま。でも、一言一句はっきりと言ってくれる声は確かに私の耳に届いてる。
ついでに、彼の耳が髪色みたいに赤いのも、しっかり確認。やっぱり可愛いなあ。
でも、嬉しい。
兄なんていたことないけど、こんな感じなのかなぁ。…ちょっと憧れる。
恋次の言葉に小さく笑って、私の橙色の髪を撫でる彼の手に自分の手を重ねて。
驚いたように、でもやっとこっちを見た恋次に感謝をこめて。
眩しい緋色に僅かに目を細めた。
「ありがとう、恋次」
忘れてないよ
あなたたちがいてくれていること。だから、私は今立てている
感謝しても、しきれないよ
キミの手が温かい理由
(温かい、まるであなたたちのようですね)
……
アンケートより