成り代わり | ナノ






スイッチ成り代わり




この場所に私なんかがいていいんだろうかと、たまに思うことがある。

私は特に取り柄はない。
変わったところなら、たくさんあるけど。よく言われるし。

例えば…パソコンで喋るとことか。弱オタクなとことかね。自覚してるとか、悲しいな。
まあ特徴はある。特徴ないっていったらボッスンだしね。ヒメコは言わずもがな。

でも私は。
人に好かれる性格でも、ヒメコみたいに容姿が良いわけでもない。いこーる、取り柄なし?

「羨ましいなぁ」

私だけの部室でそう呟く。私だけなんだから、返事なんて「何が羨ましいんだ、名前?」…あった。って、

『なんでアカツノがいるんd!?』

「アカツノってなんだよアカツノって!!」

あ、変換間違えてた。
なんてことはどうでもよくて。
さっきの一人言は聞かれてたんだろうか。たぶん、聞かれてる。さっきのアカツノ…ボッスンの言葉からして。ヒメコは分からないけど。

できれば聞かれたくなかったんだけどなぁ。黙っておけばやり過ごせるかと、適当にお疲れ様とパソコン伝いに言っておく。やり過ごせますように、とタイピングする手が震えていた。でも、現実はそんなに甘くない。

ボッスンとヒメコは私の向かいに座って、私を見る。その顔は珍しく真剣。とたんにやり過ごせる、なんて甘い考えは脆く崩れ落ちた。
いや、ボッスンの言葉で。

「で、何が羨ましいんだ?」

「何か悩んどるんやろ名前」

やっぱり。
彼らは、まあ過去のこともあって人の気持ちに敏感で、鋭い。

だから、あんな過去がある私でも信頼できるんだけど、今はそれが恨めしい。
言い逃れなんてできるわけなさそうだ。
こういう場合、白状してしまうに限る。

私はパソコンに手を伸ばした。

『私さ、ここにいていいのかなって。私、ボッスンみたいに、ヒメコみたいに強くない。支えられてるばっかりで、役に立ててない。そんなの、いやだ。役立たずは、いやだ。でも、私には取り柄なんて…ないし、』

結局役立たず。
そう苦笑いしてタイピングを終える。
前を見れば、ボッスンもヒメコも俯いたままで、言わなきゃよかったかなぁなんて後悔する。困らせるくらいなら、閉まっとけばよかった。

ごめん、とタイピングしようとしたけど。

「…そんなことねぇよ」

『ボッスン?』

ボッスンに止められた。

「お前さ、気付いてねぇみたいだから言うけどよ、役に立ててないなんてことないぜ」

「そや、名前。むしろボッスンより役立ってるで」

『マジか。でも、私集中モードとか変態な能力持ってないよ?』

「変態って何だよ!つうか、んなのなくたってお前はお前だろ」

ボッスン…たまには良いこと言ってくれるじゃないか。アカツノのくせに。
ぐっと来てしまった。なんだか目頭熱いし。でも、泣けるほど素直でもないので。

でも、嬉しいことには変わりなくて。私は、はは、と笑って。

「ありがと」 

なんだか悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなった。二人もああ言ってくれてる。悩む必要なんて、もとよりなかったらしい。

私はパソコンを使わずにそう言った。パソコンを使わなかった私に二人は少し驚いた顔をしていたけど、

「おう!」

「当たり前や!」


眩しいくらいの笑顔を返してくれて。やっぱり、この場所がいいなぁ、なんて思った。




とりあえず明日がんばる
(ひとまず今日は友情に浸らせて)

………
アンケートより