成り代わり | ナノ






ヒメコ成り代わり




ただ、彼を支えたいと思った。恋情とか友情とか、どっちなのか分からないけど。それでも、私を助けてくれた彼を支えたかった。


私は昔鬼姫なんて呼ばれてた。恐がられてた。友達と思っていた子にさえも。
それを救ってくれたのは他でもない彼だった。

ーーボッスン
馬鹿っぽくて泣き虫で変顔が得意で、ヘタレなやつ。でも、友達思いで優しくてたまにだけどやるときにはやるやつ。

そんな彼に惹かれて助けられて、私はスケット団に入った。主に武闘派。戦うのは好きだけど嫌い。それでも彼の助けになるならって。私にできるのはそれくらいだからって。

『ありがとな、名前!』

その言葉だけで。

でも、私は優しくないし人助けもあまり向いていない性格で。戦えても、彼の支えにはなれないから。

なんだか、悔しいようなもどかしいような。

でも、困らせたくないから黙っていた。
これが恋愛感情なのかは分からないけど、それでも。

悔しい


「泣きたいなら泣けばいい」

「……加藤」

誰もいない校庭でただ佇んでいたら、不意に背後に現れた気配。私と似た人間。…話せば楽になるかな。
なんて、甘えるような逃げるような感情に身を委ね、加藤に寄り掛かる。
彼はしっかりと支えてくれる。

加藤はぶっきらぼうで忍者だけど、私と同じ類いの人間。…私が助けたらしいやつ。

「泣いてもいいの?」

「誰も見てないからな」

「…私の涙なんか見たらヨゴレるよ、加藤が」

「あんたなら構わない。鬼姫」

あんたの涙は汚くない。
だから、泣けばいい。

そう回された腕を握りしめて、私の目から涙が零れた。泣けば楽になるかなんか知らない。それでも、誰かに縋りたかったのかもしれない。

弱い私と
眩しい彼と
強い彼と


この感情は何ですか?




愛しさと
(混ざり合う悲しみに気付かぬふりをした)

………
アンケートより