彼のことは幼いころから知っていた。初めて会った時からあまり折り合いはよくなかった。よくはりあって喧嘩をしたし、お互い意地っぱりだから仲直りするにも一苦労だった。でも彼のことを嫌いだと思ったことはなかった。正反対の性格をしているようで自分たちは似ていて、一緒にいると不思議な心地よさを感じとることができた。特に共にサッカーをしているときの他にいいようのない爽快感といったらなかった。彼と、晴矢とすごすお日さま園の生活が私を充実させてくれていた。そう、ジェネシス計画がはじまる前までは。
試合終了のホイッスルが鳴り響く。ピッチにでている全員が肩で息をしていて、その試合の激しさを物語っていた。
「ちっ、引き分けか。」
バーンが舌打ちする。プロミネンスとダイアモンドダストの練習試合は1-1のスコアのままおわった。
「ふん、命びろいしたね。」
「は、そりゃこっちのセリフだ。次勝つのは俺たちだ!」
「その威勢もいつまでもつかな。」
試合が終われば決まっていつも、互いに軽口をたたく。晴矢と対立してからそれはずっとかわらない。いや、対立する前から彼とはこうだった。でも、やはり以前とはどこか違う。
「ジェネシスにふさわしいのは誰かってことをわからしてやるよ。」
バーンはそう言ってプロミネンスのメンバーと共にピッチを後にする。
これなのだ。以前との決定的な差は。ジェネシスに対する執着。それが二人の間にある溝をさらに深いものにしている。
(あの方のためなのだから当然だ。)
ガゼルにもわかっている。この計画もお日さま園内での対立も、すべてはあの方のため。昔共に遊んでいた仲間たちとの対立は心苦しいものがあったが今はもう慣れてしまった。でも、それでもふとした瞬間に昔にもどりたいと思うことがあった。それは突如として沸き上がることもあるが、得てして一人の人物に関わるときに感じられることが圧倒的に多かった。
(晴矢・・・)
私はまた君に会いたいよ。以前のように軽口をたたきながら一緒にサッカーをしてつるんでいたい。でも、それを望むということは父への裏切りであり、2つを天秤にかけると天秤はわずかに父に傾いてしまう。
(自分一人の問題じゃないし。)
でも、もし自分の感情だけで天秤を測るならそれは晴矢の方に傾くのではないか。父への思いもチームメイトの期待をも捨てた先に残るのはきっと彼なのだ。 そこまで考えてガゼルは身震いした。そんなふうに考えてしまう自分に驚いた。これから計画はますます本格的になっていくだろう。そうなったら自分はどうなっていくのだろう。ガゼルはこのまま不毛な思考を続けていきそうな自分を予感した。


バーンのことでうだうだ悩むガゼル
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