逆らえない | ナノ








振り下ろした刃の閃光が走った。それを槍を交差させて受けとめる。食い込む刃は重く腕がびりびりと痺れるようだ。腰に力をいれて耐え、打ち返そうと心みるも簡単にはさせてはくれない。

「ぐぅっ、」
「どうしたよ、そんなもんかあんたは。」

挑発的な政宗の顔は二槍と刀一本分を隔てて幸村の目の前にあった。その独眼は鋭く光り幸村を射さす。その目を睨み付けながらの攻防をしていると、ふっと力が抜けた。政宗が押していた刃を引いたからだ。

「な、」

思わず幸村は体勢をくずした。二槍が離れ後ろに体が傾こうとしたところを政宗に捕まれた。正確には六文銭をひっつかまれて前にぐっと引かれる。そうして唇に柔らかな感触。思わず政宗を突飛ばして距離をとった。

「なに、を。」

今のは、己に間違いがなければ。 

「Kissだよ。油断大敵だぜ、真田幸村。」
「な、な、」

空いた口がふさがらない。その口を手で押さえて相手を睨んだ。

「真剣勝負の最中になんと破廉恥な!卑怯にござる!」
「だから油断してたあんたが悪い。」
「油断などしておらぬ!まさか、そ、そのような破廉恥ことをするとは予測できるわけなかろう!悪ふざけもたいがいになされよ独眼竜!」
「悪ふざけねぇ。」

先ほどから政宗はニヤニヤ笑いながら幸村の文句を聞いている。その様子が腹ただしく、目の前の男のなんと不遜な態度か!と腹を立てた。 

「今回は俺の勝ちだな。」
「な、なぜそうなる?!」
「どう考えたってそうだろう?」

確かに不覚をとったのは自分のほうだが、だからといって先ほどのやりとりのせいで負けたことにされるなど冗談ではない。

「待たれよ!まだ勝負はついてござらぬ。」
「おいおい、あせんなよ。」

余裕の態度の政宗は刀を鞘に収めた。

「この続きはまた今度してやるよ。」
「政宗殿!」

そう言って意味深な笑みを浮かべる彼に言い返す言葉が見つからない。じゃあな、と手をあげてさっていく背中を呆然と見送るしかなかった。

今度とはいつになるのだろうか。 










ちょっと続きます
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -