鮮やかなる | ナノ



「このようなもの、いただけませぬ!」

まーたやってるよ。木の上から下を見下ろしながら佐助は思った。視線の先には我が主真田幸村、そしてその横には独眼竜伊達政宗。上田城の庭先で二人は何やらもめているようだった。なぜ真田の好敵手の伊達がこんなところに、しかもいつもの蒼い羽織ではなく軽装で来ているのかというと、それはこの二人が好敵手という存在だけでは成りえない関係にあるためであり、さらに言うなら二人は俗にいうできてる関係だからである。 
そのため戦をするわけでもなく伊達がなんの前触れもなく上田城に訪れることはよくあった。今回もそうなのだが、いかんせんこの隻眼の男と己の主はよく喧嘩をするのだ。お互い好きあってるといってもそこは好敵手、妙に頑固で似た者同士の二人は互いに引けをとりたくはないのか、よくもめるのであった。 
飽きもせずよくやるよ、と佐助は呆れて上から二人を観察する。

「なんでだよ、あんたのためにこしらえたってのに!」
「このような高価なもの、頂けませぬ!」
「俺がいいって言ってんだろ!」
「ですから、某には分不相応だと申しているのです。」 
「いいからもらっとけ!」

そうやって二人の間で行き来しているのは紅が鮮やかな美しい羽織だった。華やら蝶やらの模様が細かく繊細に散らばっており遠目でも相当に値のはるものだとわかる。

「受け取れませぬ!それに女子が着るならともかくそのような鮮やかな色、某には似合うとはとても・・。」
「綺麗な紅だろう。絶対にあんたに映える。」
「しかし、」
「あんた戦場でも紅を着てるだろう。同じじゃねぇか。」
「全然違うでござる!女子に贈るのならわかりますが、なぜ某にこのようなものを。」
「知らねえのか。こうのはだな、着せてから自分で脱がすっていう楽しみが」
「破廉恥!」

バキッと小気味よい音が響き幸村の拳が政宗のみぞおちにきまる。その場にしゃがみこんだ政宗は幸村を睨み付けた。 

「てめえ、何しやがる。」
「す、すみませぬ。つい。」
「ついじゃねぇ。」
「本当に申し訳ない。」

心底申し訳なさそうな幸村をみて、佐助は木の上でため息をついた。 












「竜の旦那も機嫌なおしなよ。」
「うるせー。」

政宗のために設けられた一室で佐助はヘソを曲げた彼の相手をしていた。 

「真田の旦那はさ、ほら、真面目だから。」
「Shit!なんで嫌がんだあいつは!」
「聞いてる?聞いてないね、こりゃあ。」

佐助のフォローもむなしく政宗はぶつぶつと文句を言っている。 

「せっかくわざわざ特注で作らせて持って来たってのに。わざわざ、この俺が!」
「そこ強調するんだ。」
「なんか言ったか。」
「いや、別に。一応受け取ったんだからいいじゃない。」

正確には佐助が代わりに受け取り幸村に渡しておいたのだが。 

「よくねえ。とにかく、あいつが着たのを見るまで俺は帰らねぇぞ。」
「えーどんだけ居座る気なの。」
「さっさとあいつが着ればすむ話だろ。」
「いや、それは難しいんじゃないかなぁ。」

押し問答をやっているとすぱん、と勢いよく扉が開いた。何事かと二人して扉を見るとそこには幸村が仁王立ちしていた。しかも、幸村は先ほどあんなに拒んだ紅い着物を着ている。いきなりの幸村の登場に政宗も佐助もぽかんと彼を見つめる。 

「へ?」
「あ?」
「き、着てまいりましたぞ、政宗殿!」
「てかどうしたの、旦那。あんなにいやがってたじゃない。」
「その、やはりせっかくのご好意を無下にするのは失礼かと。お主も言ってたではないか。」
「え、ああ言ったね、そんなこと。」
「・・・いい。いいじゃねぇか、真田幸村ぁ。やっぱり俺の見立てに狂いはなかった!Excellent!」

政宗はずかずかと幸村に近づいていき、じろじろと全体を見渡した。 

「あの、あまりじろじろ見ないでいただきたく、」
「なんだよ、いいだろ。すげー似合う。」

その言葉に幸村の顔は瞬時に赤くなり湯気がでてもおかしくはないと佐助は思った。

「髪を結ってもいいな。そのほうが色っぽい。」

平素どおりに結んだ幸村の髪をすくいながら政宗は言う。あーこりゃあ退散したほうがよさそうだな。そう思いたった佐助はお互い見つめあい睦言を交わす二人を尻目に部屋を後にした。  














初のダテサナ小説!ダテサナは無印から好きだったので書けて嬉しい!佐助が結構でてるけど気にしない。ダテサナフォーエバー=蒼紅永劫ですよね。
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