ガゼルの元気がない。カオスを結成してからしばらくはいつもどおりだったはずだがここ数日、目に見えてやつは塞ぎ込んでいた。おかげで連携技の練習にも身が入らないようでさっぱり完成の兆しがみれない。こんなことでは勝てるものも勝てない。ふざけるな、お前はその程度のやつだったのか、お前と競いあっていた自分がバカみたいじゃないか。言ってやりたいのになかなか口からでていかない言葉はバーンの胸に巣食い続けて自身を内からむしばんでいくようだ。あいつがああなってしまった原因はわかっていた。周りの人間が垂れ流すあの噂のせいだと。その噂がそのうち噂だけには止まらなくなるだろうことも。でも、自分にできることは限られているし、このネオ・ジェネシス計画だって彼を救う手段となりうるはずだ。そう信じている。








「おい、ガゼル!」

ベンチで休憩しているガゼルに声をかける。相変わらず沈んだ表情だ。急に呼んだせいかガゼルはびくっと肩を揺らして振り返った。

「お前、最近まるでやる気ねーじゃねーか。勝つ気あんのかよ。」
「あるさ、もちろん。」
「じゃあなんでそんなに調子悪いんだよ。」
「悪くなんか・・・。」
「あの噂のせいか。」

ガゼルの表情が強ばった。

「・・・なんだ、知ってるのか。ダイアモンドダストが追放されること。」


怒ってヒステリーをおこすくらいのことを覚悟していたのにガゼルの表情は穏やかだった。

「雷門に引き分けたのだから当然の処置だな。・・・で、知ったからにはカオスは解散するのか。」
「ばっ、そんなことするか!」
「しないのか?」

ガゼルは目をぱちくりさせながら驚いたように言う。
「当たり前だ、バカかお前は。今さらやめられるか。まだ協力技だって完成してねーのに。」

そう言い放ってやるといきなりガゼルが両腕を伸ばして抱きついてきた。ガゼルの顔が肩にぴたりと押しあてられる。

「な、何すんだ。」

いきなりすぎてわけがわからない。ぎゅうっと回された腕に力がこもるのがわかった。顔があつくなる。

「ばかだな君は。私たちは今までずっと競いあってきたんだ。追放される私なんてほっといて自分たちでジェネシスの座を狙えばいいのに。」
「だから、そんなことしねーよ。」
「ほんとばかだ。」
「ばかばかうるせー。・・・ガゼル、俺はお前を見捨てたりなんかしない。見捨てるわけないだろう。」
「・・・・・。」

そう言うとガゼルは顔をあげた。青い瞳と目線が交差する。


その瞳に誘われるがまま唇を重ねた。

















朝目が覚めると隣はもぬけの殻だった。あいつはどこいったんだ。脱ぎちらかった服を着て部屋をあとにする。行き先はだいたい予想がついた。




早朝の練習場のグラウンドでガゼルは練習をしていた。ボールが無数に転がっている緑の人工芝の上に彼は立っていた。芝生を踏みしめて彼に近づく。 こちらに気がついたようでボールを蹴る足を止めた。

「お前元気よすぎだろ。」「ようやく起きたのか、おはようバーン。」
「はよ。」
「ちょうどいい。一緒に練習しよう。」
「なんでそんなにピンピンしてるんだ。昨日はあんなに」

そこまで言うとボールを顔面に向かって蹴られた。なんとか片手でキャッチする。

「ほら、早く協力技の練習するぞ。今日こそできる気がする。」
「・・・そうだな。できそうだ。」
「だろう。」

得意気に笑うガゼルを見て、バーンはボールを渡した。きっと自分たちならできる、強い確信をもってバーンはガゼルの隣に並んだ。












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