「最近晴矢嬉しそうだねー。」
「あ、そうか?」
「うん、なんか機嫌よさそう。」
「普通だろ。」
「ラブメール効果かぁ。青春だねぇ。」
「普通のメールだ!」
「てかよく風介も返信してくれたよね。今まで音沙汰なかったのに。」
「確かにな。」

風介と再会してメアドを聞き出してから、メールを送ってみた。返事なんてこないんじゃないかと思ってたけど数日してから返事がきた。それからは毎日のようにメールをしている。今風介はここから電車で二時間ほど離れたところに暮らしていること、高校でもサッカーを続けていること、新しい両親は親戚で優しく厳しい人だということが明らかになっていた。

「そういえばさ、風介付き合ってる人とかいないの?」
「へ、」
「だってもう高校生だし、いてもおかしくないよ。」
盲点だった。確かにヒロトの言うとおりだ。久しぶりに会ったあいつの容姿は人並以上だった。なんていうか綺麗になってた。男に言うには適切な表現ではないかもしれないがほかにあてはまる言葉を思いつかない。

「風介さ、見た目もいいだろうしもてるんじゃない?あ、男子校行ってたらやばいね。」
「あいつの行ってるところは共学だ。」
「なんだ、そうなの。」

なにがなんだ、だ。完全に俺の反応で遊んでいる。が、恋人がいる可能性はなきにしもあらず。どうやって確かめるべきか。メールでいきなり聞くのは不自然だろう。そうだ、

「ヒロト。」
「何。」
「お前塾であいつに会えるだろ。聞いてこいよ。」
「ええ、自分で聞きなよ。だいたい俺、風介とは時間帯が違うし。」
「ちょっと待ってればいいだろ。お前恋バナ好きじゃん。」
「好きだけどね。全く、ヘタレなんだから。」
「んだと?!」
「ま、俺も久しぶりに会いたいしね、気がむいたら聞いておくよ。」











夜中、寮の自室でさっきから俺は携帯のメール画面を開いてからずっと眺めている。いったいなんて打つべきか。これもまたヒロトのせいだ。あいつとの会話を思いだす。


「晴矢、聞いてきたよ。」「はぁ、何を。」
「風介に!付き合ってる人いるかって。」
「ちょ、おま、声でけーよ。」
「風介男前になってたねー。美人さんだったよ。」
「男前と美人は同じにしたらダメだろ。」
「で、付き合ってる人はいないみたいだよ。」
「そっか。」
なんだかほっとした。
「あと、晴矢は今付き合ってる人いるかって聞き返された。」
「え、」
「いないよって言っといてあげたから。よかったね、別れておいて。」
「うるせー。」
「もうこりゃあ脈ありまくりだよ。デートでも誘ってみたら。」
「何言ってんだお前は。」





そしてまたヒロトの口車にのる俺。我ながら単純すぎる。いや、でも別にちょっと会うくらいならいいんじゃないか。問題はなんて誘うか。思いきって電話してみるべきか。そういえばメールはたくさんしたけど電話はしていない。声が聞きたい、そう思うことは多々あったが電話はできなかった。気恥ずかしいし、電話をする言い訳がない。ただ声が聞きたいだなんて、なんて女々しい。
でも、

「あーそろそろ限界だ。」

意を決して携帯をにぎる。涼野風介の項目の番号を表示してボタンを押した。


携帯から電話の発信音が聞こえる。コールが1回2回と耳元で鳴り響く。ドキドキと心音が高鳴る。でるのか、でてくれるだろうか。期待と不安がいり混じってコールが鳴り止むのを待つ。そうして1分くらい鳴らしてもう切ろうかとしたところでコールが鳴り止んだ。
『もしもし。』

でた、風介の声だ。

『もしもし、俺だけど。』『俺俺詐欺か。』
『ばっか、ちげぇよ。』
『ふふ、冗談だ。』
『たくっ、お前なぁ。』
『どうしたんだいったい。』
『あー、あのさ、週末あたりさ、会えないか。』
『え、』
『いや、無理ならいいんだ。久しぶりに会って話せたらと思って。』
『・・・週末は塾なんだ。』
『そっか・・・。』
『でもその後、7時以降なら会えるぞ。それでもいいなら。』
『あ、ああ、それでいい。』
『うん、じゃあ塾が終わったら連絡する。』
『わかった。迎えに行く。』
『ん、待ってるから。じゃあ晴矢、おやすみ。土曜にね。』
『おやすみ。』

ぱたんと携帯を閉じた。信じられない。土曜に風介と会える。会って話ができる。この間一瞬会ったのとは違う。会って何を話そうか。
己の思考回路が笑える。まるで恋する乙女だ。でも、恋をした人間はみなこんな思考をしているのではないか。きっとそんな気がする。
やっぱり、俺は今でもあいつが好きなんだな。そんなこともうずっと前からわかっていた。でも、言えなくて、そのまま会えなくなってしまった。後悔しても遅くて、諦めて日々を送っていたはずなのに。未練がましいな。





ああ、早く土曜になればいい。













晴矢がヘタレな上乙男になってしまった。でも、たまには風介に対する思いのベクトルの強い晴矢もいいね。もうちょい続きます
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