俺はほとほとバカだと思う。休日の貴重な時間をつぶして、わざわざ電車で1時間半かけてこんなところまで来るなんて。ろくに来たこともない土地だからなにがあるかなんてさっぱり知らないし、時間のつぶし方も考えてなかった。幸いなのはここが街中だということだ。なんでこんな見知らぬ土地に俺が足を運んだかというと、実に愚かなわけがあった。




「そう言えばこの間さ、○○駅の近くで風介に似た人みたんだ。」
「はぁ?マジかよ。」
昼食事にヒロトは唐突に言い出した。
「あはは、晴矢動揺しすぎ。何、気になっちゃう?」「別に。つかいきなりなんだよ。」
「塾の帰りにね、見かけたんだよね。あそこの駅前にあるでかいの。」
「ああ。」
ヒロトが行ってる塾は全国各地にある有名な進学塾だ。駅前にでかでかとあるってのは前に聞いたことがある。
「一瞬だったから人違いかもしれないんだけどさ。」「へぇ。」
「それだけ?つまんないなぁ、もう。」
「どうせ見間違いだろ。」「そうかな。まあ、会えたら晴矢が会いたがってたって伝えておくよ。」
「なんでそうなる?!バカかあんたは!」






そう言ってきゃらきゃら笑うヒロトに若干の怒りをにじませたが、真にバカなのは俺のほうだった。あんなヒロトの不確定な言葉をたよりにこんなところまで来てしまうとは。会えるわけがない。だいたい、自分は彼に会ってどうしようというのだろう。
2年という年月は確実に彼と自分の間に溝をつくってしまっている。今さら会えたとしても何がしたいんだ、俺は。それは会ってみないとわからないような気がした。会える可能性は限りなく低いものだけれど。






とりあえず、喉がかわいたので近くのコンビニでジュースでも買うことにする。そう思って駅前のコンビニの前まで来た。そして自動ドアの前が開いて中にいざ入ろうとした時だった。中から人がいれ違いにでて来た。その人はみたことのある薄く青い髪をしていた。顔を見ていると、またこれもみたことのある顔だった。どうみてもそれは今日会える可能性なんて限りなく低いと思われた涼野風介本人だった。 まさか本当に会えるとは。こんなすぐに。やはり2年もたつと、相手は記憶といくぶん変わったような気がする。背は中学の時よりだいぶ伸びていたし、幼かった顔つきも大人っぽくなっている。昔は可愛かった、なんて言うのもあれだが、今では端正な綺麗な顔立ちになっていた。

「晴矢・・?」

凝視していたら向こうもこちらに気づいたようだった。いったい何を言えばいいんだ。急すぎて思考が追いつかない。

「え、ああ、久しぶり、だな。」
「う、うん。久しぶりだね。・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・お前この近くに住んでんの?」
「いや、ここには塾があるから。ほら、あそこの。」
そう言って風介は向かいの建物を指さした。

「あー、あそこな。あそこさ、ヒロトも通ってるんだぜ。」
「え、知らなかった。会ったことないな。」
「そうか。」
「うん・・・・。そろそろ行かないと。塾が始まるから。」

風介は俺の横をすり抜けて行こうとする。思わずその腕を握ってしまった。

「痛い、何なんだ。」
「あ、わりぃ。」

思わず手を話す。風介は頭をがしがしとかきむしった。あのクセまだぬけてないんだな。ふわふわとした青白い髪もそのままで、なんだか嬉しかった。

「なあ、風介。」
「なんだ。」
「メアド教えてくれ。番号も。」









椛様のリクエストで「未練たらたら」の続きを書かせていただきました。今回中途半端に終わったのでまた少し続きます、すみません。そしてヒロトが結構でばってきそうです。ヒロト自重。
こんなのになりましたがリクエストありがとうございました。
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