女装注意







今日は近所でお祭りなんだよ、とヒロトに二人そろって呼び出された。ヒロトはなんだか妙に浮き足だっており、そのオーラを垂れ流したまま二人に浴衣を押しつけた。彼曰く、浴衣じゃなく甚平とのことらしい。
着替えられるかと聞いてくるので平気だと答えておいた。浴衣ならいざしらず、甚平なら大丈夫だろう。たぶん。風介は不器用なので、ヒロトの手伝いつきで着替えるらしい。別に一人でも着れるだろうと思うのだが、二人して隣の部屋に消えていった。


渡された甚平は黒地に赤い文様がところどころに散っていて、シンプルなようでちゃんとした作りをしているのがわかった。
甚平なんて初めて着るけど、動きやすいし、結構いいかもしれない。この格好のままサッカーだってできそうだ。
そんなことを考えながら晴矢は二人を待った。




「ごめーん、お待たせー。」



そう言ってでてきたヒロトをみて絶句した。なんと、やつはどうみても女ものの浴衣を着ていたのだ。赤い生地にひらひらと黄色い蝶が飛んでいる。腰にまく帯はどうみても男もののそれより太い。

「どう、変じゃないかな。」
「いや、どー考えても変だろ。」
「ええ、帯曲がってる?」
そーじゃねーよ!ってつっこむのもめんどくさい。バカか、こいつは。

「女もの着るな、男もの着ろよ。」
「えー、だって、」
ヒロトはかぁ、と頬を染めあげてもじもじしだした。

「円堂君に誘わたんだ、お祭り。」
「ああ。」
こんなんで納得してしまう自分が悲しい。普段から何かと円堂に夢中なヒロトにとってこの出来事は半端じゃなく喜ばしい事なのだろう。

「二人でいくのか。」
「ううん、ほかにも雷門の子と。」
「お前大丈夫なのか、それ!」
雷門の連中にどん引きされないか。心配だ。
「吹雪君もこれでくるって言ってたから平気だよ。」「・・・・。」





「おい、できたぞ。」
まさか、と振り返るとやっぱりそうだった。風介は白地に青やら紫やらの花をちりばめた浴衣を着ていた。鮮やかな青い帯をぎゅっと腰に巻いている。

「お、お前もかよ。」
正直似合う。似合いすぎる。頭には花かんざしまでつけているし、男には到底見えない。


「わあ、似合うよ風介。」「そうか?」
「うん、俺はどう?」
「いいんじゃないか。」

きゃっきゃっはしゃぐ二人をみて(はしゃいでいるのは一人だが)晴矢は疎外感を感じる。なんだ、これ。おかしい、いろいろと。
しかし、二人の華やかな浴衣姿は二人の性別を知らないものならなんの違和感ももたないに違いない。



「あ、もう遅れちゃう。じゃ、行ってくるねー。あ、それとこれ、使うと思うから渡しておくね。」
そう言ってヒロトは俺の手に紙切れのようなものを渡してきた。そして慌ただしく部屋を後にした。バタバタと足音が響く。
帰るのちょっと遅くなるからー、と声がして扉の閉まる音がした。




「よし、我々も行くか。」「え、ああ、いやまてよ。」
早速と扉にむかう風介の腕をつかむ。
「なんだ。」
「お前、ほんとにそれで行く気か?」
「そうだが。」
「いいのか、それで。」
俺にとっては喜ばしいことだが、一応聞いてみる。




「・・・・変か。」
「へ、」
「いやなら着替える。」
「いやいや、そーじゃねーよ。」
心なし風介は悲しそうな顔をした。少なくとも俺にはそう見えた。

「似合ってる。ほんとに。」
思わず抱きしめたくなるくらいに。でもいきなりそんなことをしたら怒ることは目にみえてるので我慢する。


「じゃあ、問題ないな。行こう。」
そう行って手を引いた彼につれられて俺たちは家を後にした。










甚平着て腕まくりする風介もいいけど、浴衣着る風介がみたいです。似合うと思うんだけどどうでしょう。
続く予定
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