談話室で本を読んでいたときだ、彼がやって来たのは。その日は雨が降っていて、とても外でサッカーができるような天気じゃなかった。だからおとなしく本を読んで時間をつぶしていたのだ。彼は無言で隣に座ってこちらをじっと見てくる。
「いったい何?」
視線に堪えられず、声をなげかける。じっとこちらを見つめる瞳と目線を合わせた。
「・・・・それおもしれーの?」
風介が持つ本に視線で問いかける。面白いかと聞かれれば正直そうでもない。どっちつかずといった感じだ。
「別に。」
「ふーん。」
興味なさげな声に不信感がつのる。いったいどうしたのだろう。彼がこんなにもおとなしいのもおかしい。いつもならちょっかいをかけてくるだろうに。
視線をまたこちらに戻される。射ぬくような視線に堪えられずに目を反らしてしまう。
本に視線を戻そうとするが、なぜかできない。
「なあ、」
声につられて再び彼をみた。その顔は長い付き合いの中でもなんだかみたことないような様子で、視線をはずすことができない。
見つけあっていると晴矢は口を開いた。

「俺は、お前が好きなんだ。」


しん、と辺りが静まりかえった気がした。彼と自分をとりまく空間の時間だけが止まってしまったようだった。


今、なんて言った?この男は。信じられない。だって、

「何言ってるんだ・・・。」
なんとか声をしぼりだす。声が震えた。
「だから、聞こえなかったのか。お前が好きだって。」
「なんで、いきなり。だって、」
いきなりで、よくわからない。こんなこと。

「なあ、」
手をつかまれる。そのぶん距離が縮まった。
「お前はどうなの。」
ぐっと顔が近づく。



私は、私は・・・・。

考えがまとまらないうちに、気がつくと唇が触れ合っていた。







「何するんだ、ばかっ!」思考が一気にクリアになる。晴矢をつきとばして部屋の扉に手をかけた。バタン、と大きな音をたてて部屋をあとにした。





自室に戻ってから気がついた。しまった、本を忘れてきてしまった。








いったん告った晴矢だったけど、敵対することになったから諦めて冷たい態度をとってしまったようです。続く、のか?
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -