冷たい基地の廊下を歩く。ひんやりとした冷気が肌に感じられて心地よい。
ジェネシス計画が開始されてから数日がたつ。自分たちを星の使途とした計画は不気味なほどに着々と進んでいた。この計画に違和感はあるものの、敬愛する人のためにガゼルは粉骨砕身つくすつもりでいる。
本格的な破壊活動に疑問を感じる必要なんてないのだ。すべてはあの方のために。

そう思考していると通路の向かい側から見慣れた赤い髪がみえた。晴矢、もといバーンだった。視線を投げ掛けているとむこうもこちらに気がついたようだ。こちらをみて金の瞳と目があう。
ガゼルは若干の気まずさを感じとった。以前彼としたやりとりを思いだしたからだ。あの時はまだ宇宙人としての名前をもらう前だった。なんて声をかけるべきか。そもそも声をかけるべきなのか。こんなことで悩むのはひどく悔しい。彼のせいで、思考を余儀なくされるということが。
悩んでいると彼は近くまで来ていた。心臓が高鳴って脈がドクドクと大きくなるのを感じる。意を決して声をかける。
「晴、バーン。」
ところが彼は横をすり抜けて何事もなかったかのように通りすぎようとしている。カチンときて、先ほどより大きな声で呼び止める。「おい、まて。私が呼んでいるのが聞こえないのか。」
バーンは足を止めて振り返った。
「なんだよ。」
「なんだとはなんだ。せっかく人が呼んでいるのに。」
「で、なんの用だよ。」
淡々とバーンは問う。その声がいつものものとは違っているようでガゼルはひるんだ。
「その、この間のこと、私になにか言うべきことがあるんじゃないのか。」
自分から言いだすのは屈辱だ。羞恥に顔がほてる。
バーンは少し考えるようにしてからああ、とうなずいてガゼルをみた。
「安心しろよ。もう二度としないし、言わない。」
「え。」
「だから、もう二度とお前にいいよったりしねーよ。」
頭に衝撃が走った。電流のようなそれは心臓にまで到達してガゼルの心をえぐった。
「なんだ、それ・・・・。」
「だから、お前も俺にかまうなよ。」
こちらの声を聞いているのかいないのかわからないが、一方的にしゃべったバーンは、話はそれだけかといわんばかりだ。
「じゃあな、ガゼル。」
そう言ってガゼルが今きた道を進んでいく。あっけにとられたガゼルはバーンの背中を見送るばかりだった。








なんなんだ、あの変わりようは。口調は以前と変わらず荒々しかったが、それ以前に目も合わせてはくれなかった。


なんで、どうして。


原因はやはりこの計画なのだろうか。
あのとき言ってくれた言葉はなかったことにされてしまったのだろうか。







好きだって、言ってくれたのに。








続きます。たぶん


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