倖せ半分こ
*現パロ
暑い日々から少し肌寒くなてきたこの時期。
食欲の秋だとか読書の秋だとかスポーツの秋だとか、色々言われるけれど幸村に似合うのは食欲の秋だなと三成は思った。
スポーツの秋でも似合うけれど、お昼の弁当を豪快に美味しそうに食べる姿は見ていて気持ちがいい。
「幸村は食欲の秋が似合うな」
そう言った三成に幸村は視線を合わせへらりと笑う。
「そうでござるなぁ…秋は特に食べ物がおいしく感じまする」
「今も食べているしな」
「肉まんおいしいでござる!」
ほくほくと熱い肉まんを頬張り美味しそうにニコニコと笑顔で食べる幸村に、三成も思わず口元が緩んでしまう。
今食べている肉まんの他にまだ袋の中には色んな肉まんがある。
学校帰りのコンビニで買ったのだが、肉まんにあんまんにピザまんにカレーまんなどそこにあった肉まん全種類買ったのではないだろうか。
そして家に帰ってまだ晩御飯も食べるのだから凄い。
育ち盛りの高校生だからこれぐらいは、とも思わなくはないが三成は女子高生かとツッコまれるくらい食が細いので幸村の食欲には感心する。
「そうでござる!」
「?」
「三成殿も食べまするか?」
「…いや、いらん」
大きな一口で手に残る肉まんを食べ終えた幸村は、がさりと袋から肉まんを取り出した。
先ほどの肉まんと少し違って肉まんを包んでいる紙に、特製、と書かれている。
しかしその肉まんを食べてしまえばお腹いっぱいになり、帰ってからの晩御飯が食べれなくなりそうだ。
「うーむ…」
「私の事は気にせず食えばいい」
「しかし、この特製肉まんはとても美味しゅうござりまする」
幸村自身とても気に入っている肉まんだ。どうしても三成にこの肉まんの美味しさを伝えたいらしく、云々と唸っている。
しかし、いい案が浮かんだのかパッと表情を明るくした。それに三成は首を傾げる。
そんな三成をよそに幸村は持っていた肉まんを半分にし、その半分を三成の前に差し出す。
「一つが駄目なら半分にしましょうぞ」
にっこりと、あまりにも楽しそうに渡してくる幸村に思わず三成は受け取ってしまった。
そして受け取った後、また嬉しそうに微笑むものだから三成は何も言えず黙って一口肉まんを齧った。
ふわりと皮は柔らかく、温かな肉まんは冷えてる身体をほかほかにした。特製とかいていただけあって、味も美味しい。
「…美味いな」
「そうでござりましょう!某とても大好きなのでござる」
ガブリと豪快に食べた幸村の口元に食べかすがついていて、それに気付かずこちらを向いて笑う幸村につい笑ってしまう。
幸村は急に笑った三成に意味が分からず首を傾げ、三成殿?、と三成を呼ぶ。
「口元に付いているぞ、幸村」
「え、え!?ど、どこでござろう?」
三成に指摘されて顔を赤くした幸村は、お恥ずかしい所を…、と言いつつ的外れなとこを手でこする。
そんな幸村の手を制し、変わりに三成が口元に付いていた食べかすを取ってあげた。
取れたのを確認した後、それを自然な動作で食べた三成に幸村は顔を真っ赤に染めた。
「どうした、幸村。顔が真っ赤になっているが?」
「な、ななななんでもござらん!!」
「そ、そうか…?」
顔を覗き込んでくる三成にブンブンと首を振る。それでもまだ見つめてくる三成に誤魔化す様に、手に残っている肉まんを食べる。
けれど急いで食べた為、また口元に食べかすを付けてしまいまた三成に取ってもらう事になってしまいより顔を真っ赤に染めてしまった。
倖せ半分こ