数行の文字を見ていただけなのに、口元が緩んでいたみたいで兄さんに指摘されて気がついた。

「ニヤニヤしてるなんて珍しいな」
「そんな事ないよ」
「ふーん?」
「ちょっ、やめろよ」

ニヤニヤとこちらを見始める兄さんに僕らしからぬそれらしい言い訳をして、画面に目線を戻す。早く早くと踊る指先と反比例する戸惑う脳内。その迷う理由は単純で、「返事はどうしよう」それだけが数分一番頭を悩ませた。思わず眉間に皺が寄っていたみたいで、また兄さんに指摘された。

「眉間に皺よってんぞ、ここ」
「えっ」

なんだか急に恥ずかしくなってしまった。その理由であろう先程返ってきたメールを見てみる。考えてみればもともと絵文字は苦手だったけど君からの文章についてると、ほんの少し装飾されたカラフルな文末が嬉しくて。このむず痒いようなくすぐったさが心地良くて頬が緩んだ。

「こーいしちゃったんだー多分ー気付いてないでしょー♪」

兄さんが鼻歌を歌いながらキッチンへ向かった。タイミングを計ってのか、それとも偶然なのか、どちらにせよ僕は気付かない内に恋しちゃってたみたいだ

「ほしのーよーる願いこめってー♪ちぇりぃいいい」「にゃー」

兄さんの鼻歌に茶化されてる気がしなてならないが、無駄に窓の外を眺めた。彼女も僕からの返事を待ってたら嬉しいな、と期待しながら打ち込んだ。

(指先で送る君へのメッセージ)



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