「雪男を切り刻みたいな」

至極ふつうのトーンで、なにやら物騒な事を呟かれた。それは女の子が良く言うようなあれほしいなぁとかのトーンで言ったので聞き流してたら彼女は僕にカッターナイフを向けた。向けられただけのそれはもう何の恐怖も感じない。それは僕への愛であるんだ、愛とは個人差で形はバラバラなんだから。言い訳にも似たとってつけたような自分の思考に浸り、耳に入るカチカチと言う刃が出る音、首筋にひんやりとした感覚

「…動かないの?」
「動いたら頸動脈いきそう」

カチカチ、刃が仕舞われた。なんだ、僕の血を見たらオロオロするのか喜ぶのか見たかったのにな。なんて思いながらも怯えてるフリをする。矛盾してるとはまさにこの事だ。

「雪男を切り刻めたらね、小さな箱に入れて肌身離さず持ちたいって思ったんだ」
「ごめんね、大きくて」
「ううん、やっぱり今の雪男がすき」

椅子に座ったままの僕に、後ろから手を回し首に顔を近付けられた。ちゅうと吸いつかれた。また隠れないところにつけたなぁ。嬉しさに綻びそうになるが少しだけ恥ずかしくなった。

「またこんなとこ…!」
「だめ?」
「恥ずかしいんだけど」
「雪男は私のだから、悪い虫が付かないようにって意味だよ」

なんでこんなに可愛いの。首に手が回り頬に口付けを落とされた。胸がきゅうと締め付けられるような音をたてたと同時に、首に指が這わされた瞬間、ぎゅうと絞められた。ギリギリと強まっていく力に血が溜まる。息が気管支をうまく通らずくらりと歪む視界に目頭が熱くなった。

「う、かは…!」
「雪男可愛い、大好き」
「くる、し、…」
「あ、いけない」
「ごほ、ごほっ、」
「大丈夫?」
「う、ん…はあ」

首を絞められて、離された後のむせかえる感覚に嬉しくなり、僕からキスをねだるともっと苦しくなるようなキスをくれた。涙目になりなりながら応えていたら不意に苦しんだり恥ずかしがる姿がすきだと言われたのを思い出した。なら僕は名前の喜ぶ姿がすきだよ。だからあばら骨が折れようが腕がもげようが脚が斬れようが喜んでくれるならいくらでもこの身を捧げるから、僕を満足させてよ。血が滲むような僕への愛を頂戴。



2011.11.26
やんでれ!