※悲恋



ずっと続けば良いな。そんなの願うだけ無駄だと分かってるけど、もう縋るものが無い。無くなった居場所には甘い幻想だけ後味悪く残った。

「雪男」

呼ばれた名前が胸の奥に響いた。あの微笑みは僕の中で都合良く映された錯覚で、甘い囁きは釣り上げる為の餌だったと、この光景を見て思い知らされた。視界に入るふたりの並ぶ姿を見ていられず、目を逸らす。今まで僕の耳にべったりと残ったものは、彼女の中では軽いフレーズだったみたいで、それを信じてた僕は酷く愚かだ。求められたら、求める分以上のものを与えた。彼女を綺麗な人形の如く愛したのに、さぞかし僕は便利な道具だったんだろうね、後悔しても遅いよ、帰ってくるなら今のうちだよ。それでも、帰ってこないのを僕は分かっている。そして気付いた、人形だったのは僕だったんだと。意味を失う言葉が溢れ出ては沈んでいったから、終わりにしないと溺れてしまう。ああ、これが最初で最後の夢だ。

「さよなら」

名前は言わない、さよならの次も言わない。彼女の目は何色でもなく、全てを分かっていたように少し淋しく見えた。

(愛してる。そう伝えたのは、飼い慣らす為のエサでした)



2011.11.21
繰り返し一粒
by初音ミク