5〜不○子ちゃ〜ん〜 モブ顔でラブコメをしている親2人をじろじろと見た後、周りを見渡す。 そこで一気に目が覚めた。 「え?なに、ここ」 薄い膜に覆われた狭い空間にオレと母と父がいる。その膜は透明であり、後ろは先ほどまでいたはずの魔王城の中で、祥治と勇司とボブとサブがこちらに向かって、険しい顔を向けている。どの顔も鬼化していて怖い…。 なんだ、このカオス状態。 目の前でほのぼのイチャイチャしている夫婦の絵図だけはおかしいと思う。なぜ村人夫婦が魔王と勇者に殺気立たれてこんなに平然としているんだ? そもそも、さっき勇司と祥治の相変わらずの喧嘩に挟まれていたはずなのに、気が付いたらここにいたのはなぜか? 「ようやく、疑問をもったのかい?鈍い子だねぇ〜。質問があるならなんでも答えてあげるよ〜」 質問と言われて何から聞くべきか迷う。正直分からない事だらけだ。一から十まで説明して欲しい。 しばらく考えをまとめる為に沈黙を守る。 そして、オレは最初の質問を慎重にすることにした。 「…さっきの不○子ちゃんって母ちゃん?」 怪盗が恋焦がれるナイスボディーの悪女の名前で表現する。さっき見えた豊満な胸はそれほど印象的だった。でも、あれがこの凶暴な母のモノだとは認めたくない! 意表をついたアホな質問だったようで、母は父から視線を外してわざわざオレの顔を蔑視の眼で見てきた。 「だったらなんだって言うんだい?文句でもあるってのかい?」 「いえ!めっそうもない!」 ギロッと睨まれてオレは条件反射のように手を振り否定する。肯定しようものなら、どう言う仕打ちを受けるか恐ろしすぎて出来やしない。 「母ちゃん。久々にディーくんに会えて嬉しいのは分かるけど、その辺りにしてあげなさい。ディーくん。色々と大変だったね」 「父ちゃん…」 母と違う父の優しさに涙が出そうになる。いつもこの人がオレの癒しだった。そう思いながら手で髪を掻き揚げようとして初めて、もう一つ異変に気が付いた。 「身体が戻っている…」 先ほどまでより一回り小さくなっているが、実践的な筋肉のある腕。少しかさついた手のひら。 見覚えがあるのは当たり前、この世界の村人ディーの姿だった。 やはりこちらのほうが今は馴染みがある。 「そっちのほうがいいかなって思ったけど、伝次郎くんのほうが良かった?」 顔を覗き込むようにして父に聞かれて大きく頭を振る。 「いや。戻る為に祥治にお願いしていたし…。でも、どう言う事?なんで父ちゃんが?」 「うん。今から説明するけど、どうかビックリしないでほしいな。でも、驚くなって言う方が無理か…。嫌われたくないんだけど…」 もごもご良く分からない事を言いにくそうに言う父。何の事かさっぱり分からないオレは黙って父の説明を待つしかなかった。しかし短気な母は横からとんでもない事を口出ししてくる。 「あ〜まだるっこい。お前の母ちゃんも父ちゃんも人間じゃないって言えば済む話だろ?ほら、さっさと変わるよ」 オレの理解を待たずに、母は父を急かしながら、次の行動に出た。 「うわっ!」 さっき見たばかりとはいえ、馴染みある母と父が変身することに、思わず驚嘆してしまう。 さらに母はさきほどの姿ではなく…。 「え?き、君は…」 そこに居たのは見覚えがある黒い肌の少年。そう。勇司に監禁される危機を救って砂漠に放り出してくれた少年の姿だ。ただし、その時は平凡な容姿に見えたのに、造りはほとんど変わらないにも関わらず、人外染みた美貌の少年としか思えない姿だった。 さらにその後方では父は見た事もない、きらきら輝く金髪の美青年になっている。 オレはいったい何が起こっているのか分からず何度も目叩きをしてしまう。 「だれだ?あんたら…。オレの母ちゃんと父ちゃんは…」 「正真正銘、僕たちはお前の母ちゃんと父ちゃんさ。17年間、子育てしてやったんだから、わかるだろ?」 分かるだろ?と言われても、自分の母がいきなりぽんっと少年になって、母だと言われて、そうなんだと納得するような人はいないだろう。いたとしても狸の子供ぐらいではないだろうか? 伝から村人Dに戻りました! UNION・■BL♂GARDEN■ |