2〜どうぞどうぞお帰り下さい〜 「こら!2人とも!やめてくれ!2人が戦うのは見たくないぞ」 こちらの世界は蘇生術と言う反則技があるから、倒されても生き返るかもしれない。しかし、それでも2人が倒れる姿は見たくない。 しかしオレの必死の訴えも2人は当然とばかりに却下してきた。 「伝次郎。そうは言っても、俺は勇者で、こいつは魔王なんだ。やり合うのが当然だろうが?」 「心配しなくても、お前に免じて殺しはしないよ、伝。とっととぶっ潰して地球にでも跳ばしてやるだけだ」 地球に返せるのか?祥治。どれだけチートなんだ…。やはり魔王となると出来ない事の方が少ないのか? 「気が合うな、祥治。俺もそのつもりだったぜ」 つまり勇司も出来ると言うわけだ。 ここでオレは一つの妙案を思い付いた。 もともとオレが突然死んだ事に悔いてトリップしてきたと2人ともが言った。それが発端だったはずだ。 なぜかこの世界は100年に1度の割合で、勇者と魔王が誕生する。それも同時にである。 そして魔王が侵略を試みて勇者がその魔王と対峙して倒す。それが長い歴史繰り返されていた。 この世界の全ての生きものに申し訳なく思うが、オレが地球で死んだことで今世の勇者と魔王がこいつらになったのだ。 だが魔王になったはずの祥治は人間の国を侵略したりしていない。せいぜい魔王が樹立したことで世界に蔓延る魔物たちが活発化した程度である。 勇者である勇司もそいつらを退治したに過ぎない。 そもそも2人ともがやる気がないのだ。祥治も勇司もオレを見つけ出すためにその役目を利用したに過ぎないと堂々と口にしていた。 それならば、話は簡単である。 「それなら、2人とも勇者とか魔王とか辞めて地球に帰ったらいいのでは?ほら、オレの存在も確認できたわけだし…」 2人が地球に帰ることで魔王も勇者もいなくなる訳で、そうなればこの世界に平和が訪れる。 いや、正直言ってしまえば世界の平和の為を理由にするのはただの口実だ。 2人に自分のために全てを捨ててほしくないだけだ。 オレは天寿を全うできたわけではないが、事故と言う事で一度死んでいる身だ。だから地球に帰るという選択肢は存在しない。でも、こいつらは生きたままこちらにトリップしてきた。 あちらで築き上げていたモノをすべて手放して…。 それはオレの壮絶な死に様を見てしまった事が彼らに大きな傷をつけたからだろう。だからこそ、こうして転生した姿のオレと会う事も出来た訳だし、向こうに戻れる事が出来れば何事もなかったかのように振舞えるはずだ。その方が2人には良いはずだ。オレの為に魔王だの勇者だの、なりたくもない存在になってまで道を外して欲しくない。 そう思っての台詞だったのに、2人は構えることを止めて不機嫌そのものの顔でオレを射抜くように睨みつけてきた。 2人から矢継ぎ早に質問を浴びせられる。 「その身体も捨てて、村人となるってこと?伝」 「で、わざわざこんなとこまで来た俺たちにとっとと帰れだと?」 「え〜と?」 どう応対すればいいか分からなくてオレは口ごもってしまう。そんなオレをジッと見据えながら祥治がもう一つ質問をぶつけてくる。 「三年間も探しまくったお礼がそれ?」 「…なりたくて勇者だの魔王だのになった訳ではなさそうだし…。やっぱあっちに戻るのが…」 そこまで言った途端、勇司はくっきりと不機嫌ですと言う文字が現れそうなほど眉間に皺を寄せ、こちらを睨みつけていた。 祥治はまるで人形のように真っ白な顔色で無表情だった。 だが目は笑っておらず、付き合いの長いオレには静かに怒り狂っているのだと分かってしまった。 UNION・■BL♂GARDEN■ |