猪突猛進子犬とワルツ | ナノ

毎朝作るお弁当がひとつ増えたとか、宗茂とギン千代が妙に気を遣ってくるとか、吉継が随分とよそよそしいとか、周囲の変化に多少の苛立ちを覚えはするものの、大きな悩みがなんやかんや解決したことで気持ち的にすっきりした気がしている。

「なまえ!腹減った!」
「はいはい」
「愛妻弁当か、これはなまえも板についてきた流れだな」
「うっさい吉継、その鬱陶しい髪刈られたい?」

お昼休みの時間になったと同時に突撃してきた豊久に呆れながらも返事を返す、増えた分のお弁当を手渡せば、与えられる餌に尻尾を振ってはしゃぐ犬のようだ。そんな様子をじっと見ていた吉継が納得したふうに頷きながら口を挟んできたので、睨んでやると肩を竦めて席を外した。

いつものように屋上へ向かっていると、豊久はこちらをチラ見しながらにやけている。なんなの。大丈夫かなこの子、眉根を寄せて何をニヤついているのか聞けば少し躊躇ってから、へへへと照れたように笑った。

「嬉しいんだ」
「は?」
「こうしてなまえが俺の横にいるってことが!」
「横にいるだけで?」
「そう!それにもうただの先輩と後輩ってわけじゃないだろ?」
「……まあ、そう、ね」

曖昧ではっきりしない返事でも豊久は満足げに破顔、勢いよく私の手を取るとぐいぐい引っ張って、屋上の、いつもの定位置に腰を降ろす。
手を合わせていただきます。

「肉巻きうまいっ!」
「味付け薄くなかった?」
「丁度いい!俺、人参あんまり好きじゃないんだけどこれなら全然大丈夫だ!うまい!」
「……あ、そ」
「なまえ?」
「……」
「照れてる?」
「っ、照れてない!」
「顔が真っ赤だ!」
「うるさい、こっち見ないでよ!」

顔を近付けて覗き込んでくる豊久を押し退けて、俯く。真っ向から直球勝負の素直な言葉、嬉しくないわけがないけれど、ストレートすぎて恥ずかしかった。


直球勝負アンコール


20140123
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