猪突猛進子犬とワルツ | ナノ

「その肉巻きうまそう!」
「……あげないから」
「……」
「……一個だけだからね」
「やった!んぐ、んまい!」

静かで緩やかなお昼休みはとうの昔に行方不明、日課となった煩い子犬とのお昼休みは今日も絶好調に騒がしい、そして私のお弁当のおかずを一品取られてテンションはだだ下がり。
ムダにキラキラした、もの欲しそうな目で見つめられると非常に居心地が悪い、仕方なくあげたおかずにご満悦の子犬……もとい一学年下の島津豊久は自分のお弁当である購買の名物商品、超ド級満腹おにぎりを頬張った。
その名の示す通り、特大サイズ、ちなみに3つ目である。

「なまえは自分で作るのか?」
「お弁当のこと?」
「そう、その弁当いつ見てもうまそう!」
「両親は共働きだし、どっちも朝に弱いから……仕方なく」
「俺、なまえを嫁さんに欲しい!」
「……」
「この弁当毎日食べられるんだろ?幸せだ!」

どんな妄想を頭の中で繰り広げているかは知らないが、作らないからね、味噌汁はちょっと濃いめがいい!なんてそんなもん知らない、私は断然薄口派だ。
むぐむぐと口一杯におにぎりを頬張るのを行儀が悪いと軽く諌めて、口の端に付いていた米粒を取ってやると、それはそれはキラッキラした視線を寄越してくる。ああ、しまった、世話なんか焼くべきじゃないのに。

「やっぱりなまえは俺の嫁さんにぴったりだ!」
「いい加減にしないと、その口二度と食事できないように縫い付けてやる」
「うぐ、やっぱ嫁さんは気が早過ぎたか……」
「いや気が早過ぎとかそういう問題じゃなくて」
「よし!とにかくいい男になって、なまえが俺しか見えなくなるようにがんばる!」
「え?」
「宗茂が男磨きなら俺に任せろって言ってたんだ」

多分それ見習っちゃいけないと思う、普通に考えて宗茂と豊久じゃあタイプが違うでしょ。子犬が甘ったるくてクサいセリフなんか言い出した時にはイラッとする他に何も生まれない、粋がるのも大概にしなさい。

「むりして背伸びしたって滑稽なだけ、豊久は豊久らしくしてた方が良いと思う」
「俺らしく……してたら結婚してくれるってことか?」
「話が飛躍し過ぎてる!」

眩しくて期待に溢れた笑顔を寄越してもダメです。


ランチと微睡むラグタイム


20140728
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