1059SS | ナノ

全く本当に、仕方のないお方です。

「たーかーかーげーくーん」
「なんですか」
「姉はご機嫌ですよ、ゴッキゲーン!」
「そうですか、それはよかった」
「隆景はちゃんと飲んでる?ほらほらこれ美味しいよ」
「たんと頂いています、ご心配には及びません」
「そう?そっか、じゃあ私ももう一杯!」
「姉上はさすがに飲み過ぎですから少々お控えになってください」
「えー」
「父上の長たらしいお小言を聞きたいのなら別ですが」
「ちぇ」

握り締めて離さないお猪口をようやく離した実姉、なまえ。今宵は姉上の戦での功績を称えて無礼講の酒宴が開かれた。
酒にはめっぽう弱いくせに好きであるから始末が悪い、毎度のことながら酒が入ると、普段のしおらしい姉上は一変する、とてつもなく面倒な一面を見せるのだ。ひたすら近場にいる人間に絡み、絡んで絡んで絡み倒す、擦り寄ってみたり髪の毛をいじくりまわしてみたり、それは男女問わずそれこそ誰彼構わず、と。

恐らく姉上は『そういうつもり』は微塵もないのでしょうけれど、男という生き物はどうしようもなく勘違いをしやすいのです、酔った勢いとはいえ、こんな風に絡まれては据え膳食わぬは……と要らぬ妄執に取り憑かれるものなのです。
無論そのようなこと、この私が許すはずがありません。姉上を一番愛しているのはこの私です。

「明日に響いて苦しむのは姉上ですよ、清々しい朝を迎えたくばもうお控えになった方がよろしいかと」
「わかったよう、わかったからそんな睨まないでー」
「さ、ではお部屋までご一緒します」
「んー」
「ほら、姉上」
「もうちょいこのまま」
「……姉上」

ことん、と肩に頭を乗せ寄りかかる姉上、微かに香った姉上の匂いと酒気。
ああ、もう。
本当に……私は姉上を愛してやまない、無防備な今こそ組み敷いて柔い肌に触れたい。

「隆景」
「はい」
「たーかーかーげー」
「なんですか」
「付き合ってくれて、ありがと」

私はまだ、彼女の無垢な笑顔を失いたくはない。

20140326
20200422修正
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