1059SS | ナノ

吉継様に呼ばれて居室へと向かった、声を掛けても返事がなく、一応断りを入れて襖を開けさせてもらった。

「吉継様!?」

居室の中でうつ伏せに倒れている彼を発見し、慌てて駆け寄ってひっくり返す。常に隠されている口元の布がずれて薄い唇が見え隠れ、普段見えないものだからなんだかドギマギしてしまうが、今はそれどころではない。
何故吉継様が倒れていたのか、具合でも悪いのだろうか、いろんな考えがぐるぐる回ってとりあえず声を掛けた、しかし応答はない。閉じられた目を縁取るまつげが長くて綺麗だなあ、なんて思ってる場合じゃない!

「吉継様、吉継様!」

何度も名前を読んで肩を揺すってみた、このまま起きなかったらどうしよう、もう二度と声が聞けず、名前も呼んでもらえなかったら……。最悪の結末を想像して泣きそうになる、次第に声が震えてきて目頭が痛いほど熱い。

「よしつぐさ……」
「……うう」
「吉継様!」

微かに身じろいで低く呻く、良かった生きてた!しっりしてください、何があったんですか、呻いたあとに瞼が少しずつ持ち上がって、吉継様の瞳がわずかに確認できた。
蚊の鳴くような声で名前を呼ばれ、何度も何度も返事をする、なまえはここです、ここにいますよ!
ゆるゆると緩慢な動作で吉継様が片手を持ち上げた、何もせずにそのまま手の行方を見ていると、吉継様の手が頬を掠めたかと思ったら頬を通り過ぎる。

「え」

次の瞬間、ぐい、とどこからそんな力が出るのだと聞きたくなるような勢いで後頭部を押さえつけられる、なされるがまま吉継様に倒れこんで唇同士が触れた。舌先がちょんちょんと唇をつついて、吉継様は目を細めてた、笑ってる!

「こういう流れに持っていってみた」
「な、なん、ななな!」
「泣きそうになりながら俺の名を呼ぶなまえが可愛くてな、戯れだ、許」
「ほ、本気で心配したんですからあああ!」

バチーン!ととってもいい音が居室に響いた。

20140408
20200421修正
← / →

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -