1059SS | ナノ

女性にしては珍しい長身、しかしたわわで豊満な体つきは同じ女としてかなり羨ましいところである。あの二つのお下げ髪の後ろ姿は間違いない、絶対そうだ。


「直虎ちゃんっ!」
「ひゃあああ!?」


懐かしい人の後ろ姿に所構わず抱きつけば、相変わらず想像通りの反応が返ってきて、懐かしさから頬が緩む。今川に属していた頃からの大先輩で、今川が滅亡してからはしばらく離れ離れだったその人。井伊家の女当主、直虎ちゃんである。
今川を離れ、ふらふらあてもなく彷徨ってはその日暮らしで近場の戦に契約参戦していた私は、つい最近晴れて徳川に属することになりました。そしたら直虎ちゃんも徳川にいると聞いて、嬉しくて嬉しくて。

抱きついた背中は懐かしいいい香りがして、私よりも年上のくせにおっちょこちょいな直虎ちゃんだけど、生真面目で勤勉でいつもまっすぐで、お母さんみたいな包容力が彼女にはあった。今でもそれは健在で、追いかけ続けた背中は少しだけ月日の流れが感じられた。


「なんですか急に、曲者ですか、義母上は下がっていてください俺が片付けます」
「あっ、と、虎松!待って、違、この人は!」


あたふたする直虎ちゃんの隣には赤い鎧を身に付けた人相があまりよろしくない若武者が立っている、ご丁寧に得物を構えだしてくださった。おやまあ血気盛んですこと!だがしかし、私はやる気ありません!


「初対面の人に得物を向けないでくださーい、私は直虎ちゃんの友達ですー」
「信じられませんね、そんな軽々しい物言いでどうやって」
「虎松!この人は本当に私のお友達でなまえと言って」
「義母上、いい加減幼名はやめてくださいと何度も」
「そっか自己紹介が遅れたのが気に入らないのですね!私はなまえといいまして直虎ちゃんとはよく一緒に出陣した仲です、虎松くんどうぞよろしく!」
「……」
「はわわわ!虎松じゃなくて今はもう直政なんです!」


あらまあ。
ぎろりと睨まれてしまいました、もう直虎ちゃんが紛らわしいこと言うからー。どうやら私は彼に嫌われてしまったご様子、無言で構えられた得物にやれやれ仕方がないですね、とは思いつつも存外のりのりで私も構えちゃうのですが。

直虎ちゃんの制止?見えてないふりを決め込む方向で。

20151031
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