1059SS | ナノ

ごろりと横になりながら煙管を蒸す、ゆらゆらと立ち上る煙と、吐き出した煙を、何が面白いのか興味深げに見つめ続ける姪。

気まぐれに、煙で輪を作って吐き出してやれば、はしゃぎながら手を叩いてもう一度とせがまれる。

吐き出した煙の輪は上に昇るにつれ、形が崩れ終いには消えていく。まるで今の乱世のようだ、上へと昇ろうとするほど呆気なく、簡単に消えていく。

「うつけのおじさますごい!」
「おいなまえ、いい加減その呼び方はよせ」
「えー」
「えー、じゃねえよド阿呆」

乱戦の中で、煙のような呆気なさなんざ求めちゃいない、誰ひとりとして簡単に消させやしない。何ものにも変えがたい大事なもん、全部纏めて守り抜いてやると決めたからには全うするのが筋ってもんだ。

「康おじさま、歌詠んでよ」
「あァ?しゃーねえ、辞世の句でも詠むか?」
「ちょ、変な冗談やめてー」

縁起でもない!と怒りだすなまえを笑ってやれば、膨れっ面で何か言い返す言葉を探しているようだ。

「どうした、何か言いてえんじゃねえのか」
「む、おじさまなんか」
「ん?」
「康おじさまなんか……強くて素敵で大好きなんだからー!」
「ぶはっ」
「なんで笑うのー!」

何を言い出すかと思えば全く、どうしようもねえド阿呆め。堪えきれずに吹き出せば顔を真っ赤に染めたなまえが、半ば叫ぶように抗議。素直で純粋でまっすぐで、そんななまえの笑顔を守るためにも、まだ朽ち果てるには早過ぎる。

「いいか、なまえ」
「んー?」
「乱世が終わるまで、俺が死ぬまで他の野郎にそういうこと言ってやるんじゃねえぞ」


うつけ者の憂鬱
(乱世の波にのまれぬように)

20100220
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