1059SS | ナノ

ほんわかぽやぽや、のんびりのほほん、そんな雰囲気がトレードマークの元就さん。びっくりした表情とかってあんまり見たことないんだよね、ってことでハロウィン行事にかこつけて、元就さんを一泡吹かせよう企画を一人で練っていた昨日。

用意したのはトラバサミ(怪我しない程度のもの)それからトラバサミ、そしてトラバサミ。
全部トラバサミ、いやあのなんて言うかびっくりさせたいんだけど他に思いつかなくて……!

馬鹿の一つ覚えみたいに私は家の至るところに簡易トラバサミを仕掛けた、これでもかと仕掛けまくった。
ウッカリよろめいて、一個自分で引っ掛てしまい、素っ頓狂な声をあげてしまったけれど、これならきっとあのぽやんぽやんな元就さんもビックリ仰天するはずである。
よし、楽しみになってきた。

「ただいま」

元就さん帰ってきた!
玄関の開く音と元就さんの声、その場でおかえりなさーい!と叫べば、同時に仕掛けたトラバサミがバチン!バツン!と作動する音も聞こえてくる。

よしよしちゃんと作動しているみたいだ、元就さんの声が全く聞こえてこないけど大丈夫かな、もしかしてびっくりし過ぎて……失神なんてしてないよ、ね?
前に「もう私も歳かなあ、はは」なんてぼやいていたような気がする。
……失神なんて。

「元就さあんぎゃあああ!」

バヂン!
いい音が足元から聞こえた、ウッカリ引っ掛かってしまった私は間抜けにもほどがある。
うんともすんとも言わない元就さんが心配になって、慌てて玄関へと走ってこの様だ。

「うん?大丈夫かいなまえ」

バヂン!またひとつ、トラバサミが作動した、それは元就さんがスリッパを噛ませていて作動、というよりは解除したといった方が正しい。
元就さんトラバサミに引っ掛かってなかった!

「随分な量を用意したんだね」
「え、ああ、まあ」
「大丈夫かいなまえ、立てる?」
「あ、はい、これ見た目に反して大した威力ないので」
「そうだろうね、見た目通りの威力だったら今頃フローリングは血の海だと思うよ」
「は、はは……」

ひょいひょいと器用にトラバサミを避けながら解除、私の足のものも取ってくれて、元就さんは手も貸してくれた。
リビングに入って、そうだそうだと思い出したように目の前に小ぶりのビニール袋を掲げ、目を細めて笑う。

「美味しいって評判のマカロンを買ってきたんだ、なまえはマカロン好きだろう?」
「え、マカロン?」
「紅茶を入れて一緒に食べよう」
「食べる!」

あらかた片付けられてしまったトラバサミの群れ、隅っこに追いやられてそこだけ異様な雰囲気だ。
当の私たちといえば、リビングのテーブルに寄り添って着席、ほこほこ湯気を立てていい匂いのする紅茶を片手にマカロンを頬張る。

「はいなまえ、あーん」
「じ、自分で食べられますから!」
「いいから、ほらあーん」

元就さんには一生敵いそうもないと実感した今日この頃。

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20141118
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