1059SS | ナノ

今日がハロウィンだと気付いたのは、仲のいい友人にトリックオアトリート!とけしかけられ、お菓子なんか持ってないと言った瞬間に「それじゃあ悪戯ね!」と思いきりビンタを喰らったからだ。
未だにじんじんと痛む頬、ハロウィンなんて嫌いだ、全くもっておもしろくない。元より西洋の行事でしょうが、そんな文化東洋には必要ないっての。
あー痛い、ぶちぶちと零しながら教室に戻る。(ついさっきまで授業のプリントを集めて職員室に持って行っていたのだ)


「なまえ!」
「え?」


教室に戻って自分の席へ着こうとするなり、ドアに近い場所に席がある豊久がガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。彼はくりっとした瞳と人懐こさ、いつも全力元気いっぱいでまるで子犬のようだとよく言われている。
かくいう私もそう思っているうちの一人だ。喜怒哀楽がはっきりしていてわかりやすくて、付き合いやすい、少々やかましいのが玉に瑕。でもまあ裏表がないからわりと好印象。

そんな彼が突然「トリックオアトリート!」なんて叫ぶものだから、私は辟易して当然嫌な顔をする。
さっきこのセリフでひどい目に遭ったのだから当然だ、普通の人ならそこで空気を読んでくれるであろうところだが、相手は豊久。
ついでに言っておくと少し天然なところもある。何が言いたいのかというと、豊久は空気を読めなかった、つまり私の嫌な顔に気付かなかったのである。


「なまえ!今日はハロウィンだ!」
「知ってるけど」
「お菓子くれないなら俺は悪戯するぞ!」
「は?」


今度こそ表情を盛大に歪める、しかし豊久は全然気付いてくれない察しない。これってある意味才能なんじゃなかろうか。


「好きだ!大好きだ!」


腹いせに、友人にされたように私もお菓子代わりにビンタをくれてやろうと思ったが、それよりも早く豊久が行動に移った。突然目の前に迫る男子の制服、ネクタイの結び目が鼻頭に当たって痛い。
これはどういうことだ。

固まったままでいると、何を考えているのか、豊久はスカートの上からあろうことか私の尻を掴んできやがった。鷲掴みだ、流れが全く読めない。

いたずらの範疇を超えている。教室にいた数人の生徒らがざわつく中、豊久は私に好きだとのたまって、尻を掴んだ。何この公開処刑、羞恥よりも先に湧いてくるのは憤怒。


「こんの……っ!」


すぐさま握りこぶしを作ると、至近距離からのストマックブローをぶち込んだ。うぐう!と鈍く呻いて豊久は身体をくの字に折り曲げてよろめく。


「タチが悪い!」
「いや、あの……なまえ!ちが、俺の話を聞いてくれ!」
「知らない!」
「待っ、い、悪戯は口実……告白のタイミングが、掴めなくて、だから……!」


ブローを決めた後、すぐに回れ右をした私に豊久の必死の弁解は届かず、誤解され、誤解したままそれが解けたのはハロウィンをだいぶ過ぎたクリスマスに入る頃。

悪戯はほどほどに、時期はよくよく選びましょう。

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20150331
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