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納得がいかない、説明を求めたけど「あんたは僕のものだろう」としか答えてくれなくて全然納得がいかない。私がドライくんのものだということについての言及はしない、だって実際そうだもの。もの呼ばわりは少しばかり不服だけれど。
私が言いたいのはそういうことではなくて、ここ数日ドライくんと一緒に引き篭もらされているということだ。お部屋から出してくれない、一歩もだ。扉に近付くことはおろかドライくんから数メートルも離れることを許されない。

物理的に、という問題もある。

何かしら身動きを取れば、首輪からのびる重厚な鎖がじゃらじゃらと音を立てるのだ。それはベッドの足にしっかりと括り付けられていて、全て種類の違う南京錠が10個もしてあるんだからため息をも通り越して感動した。
感動と言っても決して良い意味ではない、全然良い意味ではない。うわあ!ではなく、うわあ……と言った、どちらかというと落胆だとかそういうニュアンス。


「……なまえ」
「ん?」
「腹は減ってないか、何か飲むか」
「んーそうだねえ、私何か持ってく」
「いい、誰かに持ってこさせる、動くな」


ドライくんに抱き込まれながら座っているんだけれど、何をしているのかと言えば私は何もしていない。ただただボーッとドライくんがプレイしているゲームの画面をぼんやり眺めているだけだ。
時々思い出したようにドライくんが首筋にやわく噛み付いてくる時があって、変な声が出てしまうのでできれば勘弁して欲しいと言ったら無視された。

今、会社はどうなってるのかなあ、とか警察沙汰になってたら困っちゃうなあなんて時折ふと思い出す。帰りたいかって聞かれてもどうなんだろう、泣いて叫んで喚いて帰れるかっていうとそれは無理な話で。(一番最初に泣いて叫んで喚いてナビを困らせたことで実証済みである)


「(あ、このゲーム何かに似てる気がする……ファンタジー系のRPG?そういえばこないだ新作が出てたFPSがまだ途中)……っひゃあ!?」
「……全く相変わらず色気のないやつ」
「ちょ、な、何笑ってんのドライくん!?」


悶々と考えごとをしていると耳の後ろに生温い感触、どうやらドライくんが突然舐めたようだ。びっくりした。私もゲームはたまにするし、アクションだとか敵をばんばん倒していけるシューティングの殺るか殺られるかのゾクゾク感が楽しくて好きだけど、こういう生々しいゾクゾクは求めていない。うん求めてない。

私もゲーム好きだよ、なんて自分から深みにはまるようなことは言わないって決めてるからずっと黙っているんだけど、一度思い出したらどうしようもなく恋しくなるんだよね。私のゲームのコントローラー。

私もやりたいなんてことも絶対言わないし、この暇をどうやって潰すかを考えることに集中するべきなのだ。「なまえ」「うん?んぅ!?」壁の装飾の数を数えようとしたところで突然目の前の画面にPAUSEの文字が現れた。

休憩するのかと思っていると、名前を呼ばれて振り向きかけたところで間髪入れずにむりやり顔を引っ張られた。頭とれちゃう!


「っん、んん!ふ、ぅ」


唇が触れてすぐにドライくんの舌が押し入ってくる、ドライくんに抱き抱えられていた体勢から向き合うような形に座り変えさせられ、死んじゃうんじゃないかって思うくらい息継ぎをさせてくれないキスをされた。


「少し遊んでやるよ」
「た、頼んでないよ……!」
「物欲しそうな顔、してたくせに」
「してないしてない」
「どこから攻略しようか」


いつでもどこまでもゲーム方式、普段は青白くすこぶる顔色が悪いくせに、こういう時は興奮のせいか頬が紅潮して至って健康そうに見えるんだ。そういう私も抵抗が疎かになっているので結局のところ何も言えない。

20151230
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