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「いつまでも自分が一番だと思っていたら大間違いだ」
「へえ、どこがかな?現に僕はまだ一番だよね?」
「ふざけるな」
「きみの方こそ」

ぎらぎらと睨み合う深い紫色の瞳と、淡い水色の瞳。紫色の方は言うまでもなく凄まじい殺気を隠そうともせず今にも相手を殺しかねない勢いだ。

しかし打って変わり、水色の方は静かな微笑みを浮かべながら溢れ出る殺気を押し殺しつつも表面上はいくらか穏やかである。(それでも目は笑っていない)その紫色と水色の間に挟まれとてもいたたまれない思いでそこにいる一人の人間。

「別に一番じゃなくても」
「「(お前の、きみの)一番じゃないと意味がない!」」
「あ、ハイ」

幻と謳われるポケモン、ミュウとその遺伝子から造られたミュウツー。一応双子の兄弟のような間柄らしいが本人達曰く、こんなやつと兄弟だなんてまっぴらごめん、願い下げだそう。

生まれながらにして自由奔放気まま気まぐれに過ごしているミュウのコピー(クローン)ということが気に入らないミュウツー。

ひどい扱いを受け(兵器としてだが)それでも必要とされて、この世に生を受けたミュウツーが気に入らないミュウ。

いがみ合う二人、同じDNAが通う身体。同じものがお互いにあるというだけでも虫ずが走る上に、似通った箇所が多いということもまた二人のいがみ合う理由。そして最大の理由は同時に同じ人間を好きになってしまったということ。

「きみは今までに破壊活動ばかり繰り返して平和を乱してきたにも関わらず、よくもまぁ平然としていられるね」
「貴様こそ平和を誇示するわりに能力を使おうともせずふらふらと傍観するだけで、その能力はお飾りか」
「大体、愛することを知らないきみになまえを愛することができるの?」
「黙れ、その愛することをなまえが俺に教えた、少なくとも貴様より愛されている」
「自惚れないでよ、僕の方がなまえを愛してるし愛されてる」

一触即発状態の二人に挟まれヒヤヒヤしながら交互に顔を見る、最初のうちは話し合いと銘打っていたようだが、もうすでにお互い喧嘩腰である。

「なまえは俺のだ」
「ひどい言い方だね、なまえは物じゃないよ」
「誰も物だと言ってない、それともなんだ?先に言われて悔しいのか?」
「悔しい?まっさかあ!そんなこと口にださずとも、なまえは僕を愛してるんだよ」

頑なとしてお互い全く譲らない、ひたすらなまえへの愛を口にしながら、いつ戦闘の火蓋が切られてもおかしくない言い争いが続く。

(ヒィィ!こんなとこで戦闘なんて始められたら大惨事!)

町から外れた閑静な公園、まばらではあるが他の人やポケモンもいる。大惨事、それだけは免れたい。

「あの、ちょっと、お二方」
「あぁなまえ、大丈夫だよ、ヤツのハラワタ引きずり出してすぐおしまいにするから、そしたらいっぱい愛してあげるよ!ちょっと待っててね」
(ハラワっ、ええぇ!?)
「貴様今の聞き捨てならねえ、おいなまえ、俺がすぐにヤツをタンパク質の塊にする。安心しろ、ヤツのモノじゃあなまえは満足できねえだろうからな、俺が満足させてやる、待ってろ」
(ちょ、え、待って!モノ!?)
「きみ、言うねえ、断っておくけど君のモノより質量もテクもあるつもりなんだよねー、僕」
「つもりだろうが、実質俺の方がある」

ふふん、と不敵に笑い睨み合うミュウとミュウツー、挟まれ居心地の悪いなまえ。若干、話がイケナイ方向に進みつつあるのは気のせいだと思いたい。

なまえを挟んでベンチに腰掛ける3人(実際は1人と2匹)間を詰め、ミュウはなまえの手を取り、ミュウツーは肩に腕を回す。

「貴様寝言なら自分のベッドで一人でヤりながら言え、そして死ね!」
「その言葉きみにそのまま返してあげる、なまえは断然僕とイイコトしたいもんね」
「え、いや、その(何故そこで私に振る!?)」
「そんなこと死んでも嫌だろ、なあなまえ、俺にキモチ良くされたいんだもんな」
「いや、だから、その(なんの話ですか!?)」
「「なまえっ!」」
「はいぃぃ!」

俺と私と僕
(俺に決まってんだろ!)(いーや僕だね!)

あと3時間はそのまんま。
20090317
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