わたし が ほしい と おもったもの は ぜんぶ あのひと が あたえてくれた。
「フーディン、ほら今日バトルの約束してたでしょ、早く起きないと遅れちゃう」
揺さぶられてうっすら瞼を持ち上げると我が主であるなまえが私を覗き込んでいた、些か焦った様子。すっかり忘れていた、今日は隣町でバトルの約束をして出陣するのは私だと。
しかし心配しなくともいざという時にはテレポートを使えばよい、起き上がりながらしっかりとスプーンを握る、なまえはもう準備万端らしい。
「よしフーディン、今日も頼りにしてるからね!」
なまえのために。
彼女の優しさ、信頼、愛情、温もり、何も知らず全てに憧れを抱いていた頃になまえは私の前に現れた、当時まだケーシィだった私は異常なまでに臆病で、役立たずだったためトレーナーに捨てられた。
……しにたい。
突然頼るものを失い行き倒れたのは言うまでもない。今やなまえは私の全て、フーディンにまで進化できたのも、臆病者で役立たずだった私がバトルで頼りにされるようになったのも全て彼女のおかげ。例え負けても捨てるなんてことはしない。
『お疲れ様、よくがんばったね、次は負けないようにまた一緒に特訓しよう』
そう、労ってくれる。
再びスプーンを握り締めた、私は負けない。彼女のためならば。
あらら短い。
20110112
20180202再掲載
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