pkmn | ナノ

月曜日の朝、いつも雨が降ってばかりいるいかりの湖は珍しく晴れていた、晴れてはいるが冬の湖はやっぱり寒い、水面は氷が張っている。


「おお、今日はなまえの方が早かったか」
「おはようございます、ヤナギさん!」

この曜日のこの時間この場所でヤナギさんはいつもいかりの湖を見つめている、その横顔とかどれだけ歳を召されても凛としている佇まいとか、見惚れてしまうのは当然だったと思う、むしろ必然だ。

毎週とはいかないが、月に1、2回ヤナギさんに会うためいかりの湖へと足を運ぶようになってからだいぶ経つ。

理由はもちろんヤナギさんに想いを寄せているからなのだが、未だに想いを告げられずにいるので、当の本人には『私もいかりの湖が好きなので!』とかなんとか適当な理由をくっつけてここへ来ているわけなのだ。

「久々に傘がいらないな」
「ですね、でもこの前傘を新調してヤナギさんに見せてあげたかったのでちょっぴり残念です」
「ああ、それは残念だ、ならば次に来た時雨が降っていたらその傘をさしてきてもらえるかな?」
「はい、ぜひ!」


隣に並んで湖を横目にヤナギさんとの会話、なんだかちょっぴり次に会う約束をしたみたいで嬉しくなる、新しい傘をさすのも楽しみだ。

おっと、いけないいけない、にやけそうになるのをどうにか微笑みに押し止めるが、だめ、止まらない。だらし無さ全開の表情をさりげなく隠すべく、巻いていたマフラーをぐいと鼻まで持ち上げてみる。これで多分大丈夫。

「なまえ」
「はい?」
「寒いだろう?これならば少しは寒さを免れられる」

マフラーを持ち上げたことで私が寒がっていると思ったのか、ヤナギさんが優しくコートの中へ入れてくれた。

「っ!?」

半分、いやもうこれは抱きしめ……なんて言うか誰もが憧れる、うしろからぎゅっ!みたいなみたいなみたいなみたいな!

「ヤ、ヤ、ヤナギさ!」
「わしも歳のせいか寒くてかなわんのだ」

単なる一時の寒さしのぎだけだとしても私は幸せです、ヤナギさん、と名前を呼ぶのが精一杯で他には何も口にできなかった。

次に会う時、ちゃんと顔を見て話ができるかどうか心配です。

Monday!

20110128
 / 

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -