「脇見とは随分と余裕ですね、クダリ」
低い体制を保ちつつノボリが素早く距離を詰める。
「必死こいてるノボリにぼくの隙、あげようと思った」
わざとぎりぎりまで詰めさせた距離にクダリのしたり顔。
「でも結局ノボリが隙だらけ!」
つま先が真下からノボリの顎を狙う。
「冗談はおやめなさい、なんのためにわたくしがわざわざ隙を見せたかくらい」
軽々と地面を蹴り、強靭な跳躍力を見せ付けながらノボリがクダリの足を蹴り払い、
「お分かりでしょうに」
そのまま体を捻らせもう一発の蹴りを頭に狙う。
「うわーっ!イーンケーン」
瞬時にのけ反るように体制を反らし、ノボリの足が顔の上ぎりぎりをスルー。
「これで、どー、だっ」
クダリはしゃがみ込みながらノボリの軸足を蹴り払う、バランスを崩して倒れかけるもすぐに手をついて側転から身体を捻り十分な距離をとる。
「まだまだ甘いですよ」
「そっちもね」
互いが同時に地を蹴って相手の間合いへ飛び込む、握りこぶしを突き付け合い顔面すれすれでピタリと停止。ふと腕を下ろしたかと思えば双方は間髪入れずに睨みつけ合う。
「昨日わたくしの森のヨウカンを食べましたね!?許しません!」
「ノボリこそぼくのフエン煎餅食べたくせに!」
(お互い様じゃないの……)
もりもりとヒウンアイスを食べながらなまえはくだらない兄弟喧嘩を見つめた、アクション映画スターも真っ青な身のこなし、さすがサブウェイマスター、全ての意味において根っからの戦闘狂。
「ですからわたくしのなまえ様に気安くベタベタしないで頂きたい!」
「ぼ・く・の!ぼくのなまえだよ、勘違いとかノボリ恥ずかしー!」
そして話が脱線してる、あらぬ方向へと邁進する二人にはため息しか出て来ない。
「なまえ様、もちろんわたくしの方がクダリよりも強いとお考えですよね?」
「……え」
「ぜーったい違う!ぼくのがノボリより強いよね、なまえ」
「……うーん」
いきなり振られて返答につまる、見たところ五分五分って感じだったしなあ……確かにどっちも強いけど、私はもっと強い人を知っている。
「むしろハチクさんかな!」
「そういうわけだ」
「わ、ハチクさん一体どこから……」
「ではサブウェイマスターの二人、すまないが私となまえはこれで失礼する」
颯爽と神出鬼没、とりあえず私はノボリさんとクダリさんに手を振っておいた。
敵の敵も敵!
(盲点でした……!)
(ムッツリに負けた悔しい!)
すみませんハチクさん好きなんです
20111108
← / →