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友人から貰った(押し付けられたとも言う)タマゴが孵化して生まれてきたのがモノズ、はじめこそなんで私にタマゴなんか……と思ったものの生まれてきたモノズをひと目見て抱きしめずにはいられなかった。

「モノズ可愛い大好き愛してるらぶ」
「そいつなまえの手、食べかけてる」
「これ愛情表現だから、許す」
「そいつなまえの鞄、噛んでる」
「好奇心旺盛だから、許す」
「そいつなまえのお弁当食べてる」
「お腹空いたんでしょ、許す」
「ぼく、昨日なまえのおやつ食べちゃった」
「犯人はクダリさんでしたか、歯ァ食いしばれ」
「なんで!なんでなんでなんでーっ!?」

腕に抱いていたモノズを座っていたベンチにそっと降ろす、コートが汚れても構わないのかクダリさんが目の前で私を見上げるようにしゃがんでいたので、すぐさま握り拳を作って見せた。

ばっと立ち上がって抗議の声を上げる彼の振る舞いはまさに子供そのもの、立ち上がったことにより今度は私が彼を見上げる側、背も高い上にいい歳した大人が何たる様。ぎぎぎと歯車が上手く噛み合わなくなったギアルよろしく歯ぎしりして駄々を捏ねくりまわすクダリさんの機嫌はどん底。

カナワタウン行き電車のホーム、私の大事なパートナーのうちの一匹であるモノズを再び抱き直す。

私達は今からカナワタウンへ行くのだ、モノズにカナワタウンは閑静ないいところだと話しをしたら何となく通じたらしく、ギアステーションの近くを通るたび頻りに反応するので恐らく行ってみたいのだろう、と。

それでお弁当も準備して軽いピクニック気分でベンチに座り電車を待っていたらそこにサブウェイ問題児……あ、間違えた、サブウェイマスターのクダリさんが登場。

極度の甘えん坊で構ってちゃんな彼だから私がモノズに構いきりなのがどうも気に入らないらしく、登場早々に私からモノズを退けようとしたが、敵意剥き出しのクダリさんに対抗意識を抱いたモノズもまた、その可愛い口をへの字にしたり噛み付こうと唸る。

そういえばモノズが仲間に加わったのも最近の話、クダリさんとは今が初のご対面……っていうか貰ったタマゴが孵化してまだ3日目だし。生まれたばかりでこんなにも好戦的とは(相手クダリさんだけど)育て甲斐がありそうだ。まさに将来有望株。

「あー可愛いモノズ、超可愛い」
「ずるいずるいずるい!ぼくも!なまえ、ぼくも撫でて!可愛いって言ってギューッてして!」
「慎まずにお断りです」
「むきーっ!」
「それに大の大人で男のくせに可愛いって言われて嬉しいですか?」
「うん、なまえなら嬉しい」

だめだこの人、精神面においての成長が早期停滞しちゃってるみたい、ぐるぐる唸るモノズと睨み合いながら、がおー!なんてクダリさんも本気で負けじと吠える。

「いいもんいいもん、ギューッてしてくれないならぼくがする!」
「はい?」

同じベンチの真隣にどすんと腰掛け抱き着いてこようとした彼、自暴自棄なのか何なのか、私には構ってくれるまで構うぞなんてふうに聞こえる、しかしそんな彼の腕は私には届かない。

「ううっ、うわあああん!か、か、噛んっ……こいつ噛んだ!」

モノズがすかさずクダリさんの手に食いついた、もぐもぐしっかり噛んでいるようでなかなか離さない、さすがにこれは可哀相だと思いモノズの首のつけ根をちょいちょい突く、するとモノズはくすぐったがって閉じていた口を簡単に開いた。

手を引っ込め本当に痛かったのか、えぐえぐ子供のように泣き始めてしまったクダリさん。しょうがない、少しの間だけモノズをモンスターボールに戻してクダリさんの少し赤くなった手を取る、モノズも本気で噛んだみたい、まだしっかりした歯ははえていないけどそこそこ力は強いようだ。

よくもまあ恥ずかしげもなく人前で痛い痛いと泣けるなあ、大の大人で男のくせに……ってこれ2回目か、それにクダリさんだもん仕方ないよね。

「痛いよおおお!」
「さすがに大袈裟ですよクダリさん、もうモノズは噛んでませんから」
「……痛かったもん」
「そうですね痛かったですね、モノズの代わりに謝りますから泣き止みましょうよ」
「じゃあ痛いの痛いの飛んでけーってして」
「やですよ恥ずかしい」
「うわあああん!うううわああああん!」

痛いの痛いの飛んでけってあなた今時幼稚園児でもあんまりしませんよ、すっぱり断ったら断ったでクダリさんまた大泣きするし、ああもう煩い!

「わかったわかりましたやりますよやればいいんでしょやれば、痛いの痛いの飛んでいきやがれー」
「心がこもってない!」
「痛いのー痛いのー飛んでけー……」
「治った!なまえが言うと可愛い!」

(くそっ、恥ずかしい)

「ありがとうなまえ、好き!」
「それはどうも」
「なまえもぼくが好き?」
「普通です」
「違う、好き!なまえ言って!ぼくに好……愛してるって言って!」

あああ、頭が痛い。

話が飛躍し過ぎて端からついていく気はないけれど話にもテンションにもついていけない、もう一度モノズを出そうかどうしようか悩んでいるうちにまたクダリさんが泣き出したので仕方なく、モノズの次に愛してますと呟いた。


好きだけども恥ずかしいので変化球的な(わかりにくいよ)

20101229
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