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「うわ、こらマッギョ!あいたっ、そこ反則あはは!」

湿地のマッギョと朝靄の中撥ねる泥にまみれて遊んでいたら背後からハチクさんの鉄拳が飛んできた。いてて、愛が痛いよハチクさん。

「馬鹿者が!」
「ハチクさんおはよーござ」
「病院に戻れ馬鹿者!」

――この間、セッカジムの氷上でハチクさんのクマシュンと遊んでいたところ、転んでそのままつるつると有らぬ方向へ滑って壁やら岩やらに至る箇所をぶつけまくり、結果病院送りになるという惨事を引き起こした。

脱臼と打撲、転んだ際に頭もぶつけて氷の上でしばらく伸びていたせいか、所々に低温火傷も。

もちろんハチクさんからは盛大なお怒りお咎めを頂戴して、そりゃあもう氷タイプ使いのくせに火炎放射できそうな勢いで怒るから「ハチクさん、カルシウム足りてないの?」と尋ねたら手痛いしっぺ返しを喰らった。

「馬鹿者!」と言いわれながら。

私としては心配かけまいとふざけてみたのだがガチで冗談の通じないハチクさんには通用しない手だと学習。

心配かけてごめんなさい、と素直に謝ったら無言で抱きしめられたので、入院した当日は病院を抜け出すのを我慢して明日以降にすることにしておいた。(じっとしてるの苦手だし)

それで明朝にこっそりベッドから抜け出して湿地にいるマッギョに会いに来て今に至る、ハチクさんに見付かりました。

おかしいな、セッカのジムリーダーといえこの湿地の隠れ場所は私とマッギョだけの秘密の基地のはずなのに、割りとあっさり見付かるとは予想外。

でもでも言い方を変えれば、つまり私がどこにいてもハチクさんは必ず見付けてくれるってことだよね?ラブパワー全開、愛の力ってすごいね!

「なまえ、何故お前は毎回こうも私の寿命を縮めるような行動に出るんだ」
「え、ラブパワー全開なのにハチクさん死んじゃうの?」
「(ラブパワー?)……まだ死なん」
「だよね、死んじゃやだよハチクさん」
「一歩間違えていたら死にかけたかもしれんお前の言えた台詞じゃない」
「やだなあ一歩間違えてもハチクさんを置いて死んだりなんかしませんよー」
(……確かにそう簡単には死ななそうだ)

マッギョと共に病院へと強制送還されて、今はベッドの上。泥まみれで戻ってきたから婦長さんが物凄い怖い顔を繰り出してきた。

私の素早さが、がくっと下がった!

にへ、と笑ってるマッギョを見てハチクさんはいつの間にマッギョを?と聞いてきたけれど私とマッギョはただの親友というか心友であって、別にゲットはしていない。

(悠々となまえに抱かれおって……小憎たらしい)
「ん?どしたのマッ」

ハチクさんが何を思っていたのかは知らない、じっとマッギョを見つめていたから気に入ったのかなと思いかけた矢先にマッギョが腕の中でもぞもぞ動いた。

次の瞬間口から泥を噴き出して(マッドショットか!)ハチクさんの顔面にクリーンヒットしたもんだからびっくり。

泥も滴るいい男、相変わらず泥にまみれてもハチクさんはかっこいい、不穏な空気に包まれて私はちょっと何も言えなくなっちゃったんだけど、マッギョはどや顔。

「……」

うわあああ!これはやばいよ!ぐいっと顔の泥を拭ったハチクさんの目は今まで見たことないくらいまでに据わっていて、鋭過ぎる視線はマッギョにロックオン。

「おい、そこのマッギョ」

地を這うようなおどろおどろしい声色に私がガクブル、久しぶりにこえええ!

「今すぐだ、表に出ろ、表だ」
(ぷいっ)
「マッギョ寝たあああ!?」

ハチクさんの言うことを無視して眠り始めたマッギョの図太さに乾杯……いや感服。私は怖くてハチクさんの顔が見れません。

ッタ
(マッギョ起きて頼むから起きて!)


ハチクさんはマッギョが苦手そうだと思いました何となく。
20101124
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