ひゅお、と留まっていた冷たい空気が動く。
背を向けていた入口の方に体ごと振り返ると、相変わらずの笑顔を携える希望に満ち溢れた若者、なまえ。
「えへー、また来ちゃいました」
わしとのジム戦をとうの昔に終えリーグ戦も終え、更なる冒険へと手持ちの仲間達と出ていたはずだというのに、彼女はたびたびこのチョウジのジムへと戻ってくる。
この前来たのは確か……2週間ほど前か。
「やれやれ、旅はいいのかね?」
「順調ですよー」
「ここに戻って来てばかりでは順調とは言えんだろうに」
「空飛んで、テレポートで一瞬ですからノープロブレムです」
「はは、全く君という奴は」
つるつると器用に氷の上を滑り進みくる。
「えへへ、お隣りお邪魔しますね」
「ああ、構わんよ」
少しばかり横にずれ、なまえのためにスペースを空けてやる、彼女は隣に来ると嬉しそうにわしを見上げた。
「ヤナギさ……っくしゅ」
外気温より室内はかなり温度が低い(一面氷張りだからな)コートや寒い場所用のウェアを着ていないなまえには、ちと辛いやもしれん。
「少し寒そうだ」
「え、あ!」
「わしの襟巻きを貸してあげよう」
「わ、ありがとうございます!でも襟巻きって」
そこはストールとでも言っておくべきだったか、くすくすと笑われながらわしはなまえの首にストールを巻く。
さっき以上に嬉しげに笑うなまえ。
寒さを忘れるほどに雰囲気は温かい。
ヤナギさん好き!
リメイク版も素敵!
20100811
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