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彼には隙がなさすぎる。

ついでに言ってしまえばデリカシーもないし、無遠慮だし、無愛想だし、見た目を除いていい男の条件からことごとく逸脱しまくっている。健康管理も疎かだし、昼夜逆転してることなんてしょっちゅうだ。

『アカギさまが倒れました』

だから、こんな報告が入る度にあたしは大事に至る前に、少しでもおかしいと感じたらすぐに知らせてくださいよ、って再三再四言い続けてきた。もう今度ばかりは頭にきて、アカギさんの仕事を全て取り上げ(暇そうな下っ端に押し付けて)医務室に軽く軟禁。なんてことを!といつもなら抗議するサターンも今回ばかりはなにも言わなかった。

それもそのはず、アカギさんは過度の疲労であろうことか丸一日昏睡状態に陥ったのだから。そこまでひどいなんて誰も思っていなかったし、彼の顔色は生れつき悪いから(ついでに人相も悪い)体調の良し悪しの判別が些か困難を極める。

「……」
「アカギさーん、目が覚めたんですね」
「……疲れた」
「め、珍しい!アカギさんが弱音を吐いた!」
「うるさい」
「仕事の大半は(下っ端達が)片付けましたからね、ご心配なく」
「助かる」
「いーえ」

がたがたとベッドの隣に椅子を持ち、起き上がりかけたアカギさんを押し戻しながら布団に手を乗せた

「どいつもこいつも倒れたくらいで大袈裟な」
「いや、普通に倒れたならそれほど心配はいりませんけどね」

あなたの場合は倒れると生死に関わるような域にまで達しますから、そりゃ大袈裟な……大事にもなりますって。

「いつだったか呼吸停止してたことありましたからね」
「………」
「大事な時ですもん、むりしたくなる気持ちはわかりますけどね」
「むりはしていない」
「………強情ですね」

表情ひとつ変えず、自分の身体だと言うのにそれをまるで労らない。淡々とした口調はある意味恐ろしく、寂しくもあった。

少しくらい甘えてもいいのに。

「……どういうつもりだ」
「願掛けですよ」

素早くアカギさんの唇を塞いでみたら、案の定予想していた言葉が飛んできた。もちろん、した理由は言葉通り、アカギさんがあんまりむりしませんように、だ。

「弱ったアカギさんほど、護ってあげたくなるものはないですからね」
「……ふん」

護りたい、隙だらけの
(アカギさん、顔赤ーい!)
(……うるさいっ)

ほのぼの?
20090902
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