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ばっちーん!

「ばかぁっ!ばかばか、もう知らないんだからぁっ!」

乾いた音と共に可愛らしい捨て台詞を吐いて走り去る人。一体何事なんだろう、と集まってくるギンガ団下っ端諸君。

そこで呆然と立ち尽くしていたのはなまえであり、くっきりと手形の残る頬を押さえている。走り去る人は紛れも無いサターン、ということは。叩かれたのそれもそのはず、あのサターンからは想像もつかない台詞が彼の口から飛び出してきたのだ、呆然とするほかに何ができよう。

「……」
「どうなさいました?」
「ほら、あれ。ギンガ団特製ドリンク」
「それが、なにか」
「あれねー腐ると副作用でるみたいなんだよねー」

突然なまえは思い出したように声を上げて悪びれることなく原因であろうことを口に出す。ギンガ団の食事を担当するなまえは時たま不思議なものを作っては冷蔵庫に忍ばせる癖がある、あのドリンク疲労回復には確かに効くが何故か腐るのが早いらしい。

何が入っているのか気になるのだが恐ろしくて聞けやしない、むしろ聞きたくない。徹夜続きで疲労困憊していたサターンはきっとその腐ったドリンクを飲んだせいでああなってしまったと話の経緯上読み取ることができる。

「うーん今回のは乙女になっちゃう副作用かあ、まさにオトメン」
「こ、今回とは?」
「いやあ、前にも何回かあってね、ほらサターンて疲れると注意力が散漫になるから」

腐ってるなんて気付きも確認もしないで飲むから。前回は幼児化したよ。可愛かったーあはは、なんて全く反省の色を見せないなまえ。それもそのはず副作用の効果は半日で切れる上に、何より本人はその時の記憶がないため、特に問題はないのだ。(周囲の見る目を除いては)

「それで、あの、差し支えなければ……」
「あぁ、叩かれた理由?」
「……はい」
「嫉妬よ嫉妬、ジェラシー」
「……はい?」
「ただアカギさんと話しをしてただけなのに、オトメンと化した彼には浮気してるように見えたんでしょ」
(す、凄まじい被害妄想!)

ただでさえ元々独占欲が強く、なまえに依存気味なサターンだ、オトメン化して余計に凄まじいことになっているらしい。

しかしなまえは気にすることもなく笑っている。下っ端が不思議がっているとちょいちょいと軽く廊下の突き当たりを顎でしゃくってみせた。

(うわぁ……)

そこには、しゅんとすまなそうにこちらを見つめるサターン。しばらく見つめたのち徐に駆け寄ってきた。

「……す、すまないなまえ、その、まだ痛む、よな……?」
「大丈夫だよサターン、わたしこそごめんね」

その言葉を聞くなりぱっ、と顔を輝かせサターンは人目も憚らずになまえをすぐさま抱きしめる、ツンデレに属する彼にしては珍しい行動だ。

多分これもドリンクの副作用所以の行動だろう、ツンデレのツンがどこか遥か彼方へと吹っ飛んでいる。

「知らないなんて嘘だからな!ほんとは知りたくて仕方ないんだからな!」
「うん、ありがとう」
「なまえ、大好きだ!」

(キャアァァ、サターン様が壊れた!)

ツンとデレ
(正常な彼に戻るとこの時のことをいっさら忘れてしまうのだからもったいないこの上ない)

20090801
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