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虹色の羽根を手にした時のあの何にも変え難い嬉しさは多分……ううん絶対一生忘れない。自らきらきらと輝く羽根は不思議と温かく感じた。

すずの塔、エンジュシティにそびえ立つ由緒ある塔。この羽根を持って最上階に行けば逢える。伝説のポケモンホウオウに。

旅を始めてから度々耳にしていたホウオウの話、一目でいいから見てみたいなあなんて思っていた。又とないチャンスを逃すまいとあたしは夜が更けているにも関わらずすずの塔へ足を運んだ。

「……暗いよ怖いぃぃ!」

昼間に比べて薄暗く思ったより不気味な塔内、ちらちらとうしろを振り返りながら進んでいく。こんな時にゴースト系が出て来たら間違いなく失神する。
頼むから何事もなく上まで行かせてぇぇ!と必死に祈りながら一段、また一段と階段を上がる。

「上に行きますん?」
「ひぇえぇぇ!」
「ちょ!……間一髪やわぁ」

急にうしろから声をかけられ肩にぽん、と手を置かれれば誰だって飛び上がる。あたしは運悪く階段を踏み外しかけたが、背後の声の主が抱き留めてくれたおかげで階段を転げ落ちずに済んだ。

「あ、あ、あありがとうございます……!」
「構いまへん、こっちも驚かしてしもて堪忍しとくれやすー」
「えと、もももう大丈夫なので!」

うしろから抱き込まれるように抱き留められたままの体制、ちらりと見えた姿はとても豪華で色鮮やかな着物をまとい、すらりとした殿方。綺麗という言葉はまさにこの方にあるような見た目。

「ほんまに?」
「はいっ、はいっ、はいっ!」
「むう、残念どす」

(なにが!?)

「ま、それは置いといて上に行きますんやろ?」
「は、はい!」
「俺が案内しますよって」

素敵な笑顔を浮かべながら彼はあたしの返事も聞かずぐいぐい引っぱっていく。階段を駆け上がり時折しゃらしゃらと装飾品の音が辺りに響く。
たん、と最後の一段を登りきり、切れかけた息を深呼吸で調えた。

着いた先は塔の最上階、屋根の上。暗い夜空の下で目の前の彼だけがぼんやりと輝いている。

「ホウオウに逢いにきたんでっしゃろ?」
「うん、でもいないみた」
「おりますやんかぁ、目の前に」
「……はい?」

にこ、と笑った彼は淡い光りを放ちながらくるりと回る。次の瞬間そこには虹色の羽根をした大きな鳥類。
紛れも無いホウオウがいた。

「ポッケのそれ、虹色の羽根と違います?」
「あ!同じ色」
「俺に逢いに来てくれはったん?」
「えと、そうですね」
「嬉しおすー!ぎゅうっとしとこ!」

(く、くすぐったい!)

はね
(かぁいらしいわあ!)
(く、苦し!)

我が家のホウオウは京都弁!(ものすごく間違った使い方だとは思いますがご容赦を!)
20090512
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