澄んだ青空のような双眼に映る自分の顔がひどく情けなくて正直笑えた。そんな私を見て彼は一言こう言った。
「渡ろう」
ひとつ森が死んだ。
密猟者達の仕業、森で暮らすポケモン達を捕まえては売り捌く。近くに暮らしている私は当然見過ごせなくて、同じくこの森にいるセレビィと共に密猟者討伐に立ち上がった。
撃退こそ出来たものの無傷とはいかず至るところに青痣やら打撲傷、それだけで済んでこれ幸い……と思いきやあろうことか密猟者達は腹いせだろう、森に火を放った。
火は瞬く間に全ての木々を飲み、辺り一面地獄絵図と化した。どうにか森に棲むポケモン達と消火作業に当たるが、ようやく鎮火した頃には全てが炭や灰の海。
もはや生き物が暮らせるような場所ではなくなってしまった。
死んだ森でセレビィは生きてはいけない、大好きだったこの森。ああ、私にもっと力があれば。
「なまえはよく頑張ったよ」
「ごめん、ごめんねセレビィ」
「ん、なまえは悪くない」
「ごめんな、さい」
「身を挺してぼくやみんなを護ってくれた、ぼくの方こそなまえを傷付けさせて……ごめん」
「せれ、び……」
灰化した森の真ん中でひっそりと涙を零しあった、零れた涙は黒い地面に落ちてすぐに消える。
セレビィは私の手を取って静かに目を閉じた。時空を渡る瞬間だ。
「ぼくは彼らを赦さないよ」
「どこへ、行くの」
「彼らがいないとこ」
「でもいつかは見つかっちゃう」
「大丈夫、次は容赦しないよ」
淡い光りに包まれてふたつの影は跡形もなく消える、物音ひとつしなくなった森は静かに再生の時を待っていた。
深山幽谷の地へ
(きみだけは失いたくないんだよ、たとえこの身が滅びようとも)
20090512
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