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「ドータクン、また喧嘩したの?」
「我、悪くない」
「でも殴っちゃったのはいけないよ」
「……」

むすっ、とした雰囲気のままドータクンは私の服の裾を掴む。普段は穏やかで余り感情を面に出さない彼。

同じ仲間のゴウカザルと些細なことで言い争いになり、おもいっきり殴り飛ばしていた。

「怠け過ぎ」
「まあそれはよくないね」
「我言った、怠け者必要なし、なまえ、我がいればよし」
「まあ、随分とはっきり……」

ドータクンはむすっ、とした雰囲気を滲ませながら続けた。

「バカザル、仏頂面つまらぬ奴こそいらぬ、そう言った」
(ああ、それでカチンときたんだ)

普段から無口で常に冷静沈着そうなドータクンだが、内に秘めているものは燃えたぎるほどの熱い闘争心。

見かけによらず熱血漢なのだ。

意外と血の気も多いからカッとなって、なんてこともめずらしくはない。表情に乏しいところはコンプレックスらしいから余計にね。


『辛気臭ぇすました顔しやがってうぜぇんだよお前!』
『黙れバカザル、騒々しい』
『かーっ!なんか知んねーけどむっかつく!』
『単細胞、能無し、サル』

この前もそんな言い争いをしていた、炎と格闘、エスパーと鋼。お互いに弱点を持ち合う二人。いやいやサルって……。

手持ちでは古株のツートップ、お互いの力は認めてはいるものの、どうしても反りが合わない。

「気に入らぬ」
「確かにちょっと無神経なとこもあるかもしれないけど」
「何故なまえ、最初の手持ちバカザル、何故我じゃない」
「え、ちょ、ドータ、」

ぎゅ、と抱きしめられた矢先に耳元で「好いている、愛おしいのに」囁かれ、ひやりとした身体が押し付けられる。

最初とその次、埋まり切らないその差。

こんなに近くにいるのにどうしてこうも遠くに感じるのか、それはゴウカザルが一番で自分が二番だからという既成事実。

悔しい、悔しい。言わずともドータクンの心がそう叫んでいるような気がした。

「一番も二番も関係ないのに」
「?」
「仲間になってくれたのが遅かれ早かれ、私はみんな同じように好きでいるよ」
「……」
「ドータクンにそんな顔してほしくない、ゴウカザルだけ特別だなんてことないから」
「……それ 真か」
「ね、だから今回は謝っとこ?」
「仕方、ない」

もう一度軽く抱きしめてからドータクンは小さく答えた。

その後、偶然その光景を見付けてしまったゴウカザルが『てめぇおれさまが居ねぇ間になまえになんてことしていやがるんだゴルァ!!』なんて、私の仲直り作戦も虚しく再び乱闘になったのは言うまでもない。

20090501
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