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「あれ、ロズレイド?」

まだ、日も昇らぬ深夜。

ふと、目を覚ますとモンスターボールの中にいるはずのロズレイドがいない。ほかのポケモン達はまだまだ夢の中。

ふたの開いた空のモンスターボールを取り上げ、辺りを見回して見るが見当たらない、ふとぞわぞわとした不安感が押し寄せる。あの子に限ってそんな、まさか、もしかして、って。

ベッドからおり(今日はポケモンセンターで寝泊まりしているのだ)そっと部屋を出た。

(どこだろ)

明かりの消えた廊下を進み、外に出た。ひんやりとした夜風が頬を撫でる。しばらく歩くと次第に暗闇に目が慣れてきた。

確かポケモンセンターの裏側には花畑があると聞いたような。そんなことをぼんやり考えていると、よく見知った銀ともグレーともつかない後ろ姿が見えた。

「ロズレイド!」
「おやマスター、どうかなさいましたか」
「どうかしたじゃないよ、何してるのこんな時間に」
「申し訳ありませんご心配おかけして、そのようなつもりではなかったのですが」

ロズレイドは目線を落とし、何かに触れる仕種をみせた。その先には夜露に濡れた薔薇が咲き誇っていた。月の光りに反射した夜露がキラキラと幻想的に輝き、夜風に靡いた。

慈しむように花びらに触れ、ロズレイドは笑みをもらした。

ふんわりとした暗い銀糸の髪が揺れる。

「何かに呼ばれて来てみればこの子達でした、どうやら突然変異した種類のようで」
「確かに見たことない色だね」

黒に近いような灰色。

薔薇にあるまじきような色だが、違和感はなく本当に綺麗だった。見方によっては銀色に見えないこともない。

考えられない奇跡のような突然変異。

するとロズレイドは適当なところで灰色の薔薇を摘み始めた。

「ちょ、ロズレイド!?勝手に摘んだりしたら怒られちゃう!」
「大丈夫です、きちんとジョーイさんに断りは入れてあります」
(なんて用意周到な)


数本の薔薇を摘み、満足そうに見つめたあとそれを手渡される。安心して持てるように刺もきちんと落とされていた。

薔薇とロズレイドを交互に見て困っていると、何を勘違いしたのか寂しそうな表情を浮かべ差し出していた手を静かに引いた。

「すみません、やっぱり毒々しいですよね気持ち悪い、ですよね」
「ロ……」

控えめな表情は昔から変わらない。スボミーの時代からの付き合いだから、気にしているのだ。自分が他の個体とは異なる色合いをしていて、自身の持つ特性が毒の棘であり、それで私を傷付けてしまったことに。

「バカレイド」
「な、バッ……!」
「そんなこといつまでもうじうじ気にして、私はロズレイドが大好き!ハイ、ロズレイドは?」
「ぼ、僕も大好き、です」
「それでいいじゃない、私はロズレイドのこと気持ち悪いなんて思ったことないしましてや嫌いになんか絶対にならないんだからね!」

貰った薔薇を抱いて、ぎゅーっとロズレイドも抱きしめる。ほんのりいい香りがしておずおずと背中に手が回されたのがわかった。

ASH ROSE
(ロズレイド、君のせいできっと明日は寝不足だ!)(えっ……)(責任をとりたまえ、一日中ごろごろしよ!)(えぇぇっ!)

20090501
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