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一限目が終わった後で、二限目が始まる前の短い休み時間、バァン!と荒々しく明け放たれた教室のドアに誰もが肩を震わせて、音のした方に視線を注ぐ。びっくりした中にもちろん私も含まれているわけで、顔を上げた先に三成くんを確認すると、喉の奥から「ひい!」と情けない音が漏れた。
脇目も振らず、一直線に向かってくる三成くん。今、孫市ちゃんは席を外していて不在である、窮地!私ピンチ。


「なまえ!」
「は、はい!」


いつもより少し荒げられた声に震える、怒ってる、これは絶対に怒ってるよー!なんで?私何もしてないのに。真横に立たれ、ダァン!と机に手を付かれる、逃げ道を塞がれてしまいました。それとちょっとお顔が近い怖いヒィ!三成くんちちち近い!


「あ、あの……?」
「……」
「三成、くん?」
「放課後だ」
「え?」
「放課後私にスマートフォンの使い方を教えろ」
「え、えっと……」
「教えろと言っている」
「う、うん!はい、了解です!」


え、スマフォ?と呆気に取られていたけれど、三成くんの凄んだ顔と声色に気圧される。首がもげてしまいそうになるほど上下に振り、負けじと大きく元気良く返事をした。こういう場合は空元気って言った方がいいのかな、いや今はそんなことどうだっていい。
三成くんは私の反応に満足したみたい、怒った雰囲気が薄れて僅かに穏やかな表情になっている。でも相変わらず顔が近いから緊張感はどこにもいかず、ずっとそばに。
……それにしても三成くん、お肌綺麗で羨ましいな、顔色はいつもあんまり良くないけど。あ、睫毛も長いんだ、いいなあ。
ふに。


「……っ!?」
「……」


緊張しながらもぼんやり三成くんの顔を見つめていたら、細くてしなやかな指先が私の下唇を摘まんだ。何が起きた。
驚いて体ごと引こうとしたけれど、三成くんの指の力が存外強くて私は唇を摘ままれたまま。必然的に引っ張られる形になる、きっと私は変な顔になっていることでしょう、何この羞恥プレイ。
三成くんは真顔でのままだしいっそのこと笑われた方がマシなんだけれども。
きっと上手くしゃべれないだろうから、と思ってあえて何も言わずに三成くんを見上げる。早く離してほしいなーって念じつつ。彼は一体何を考えているんだろう、何を思って行動したのだろう。
私にとって三成くんは謎だらけ、ミステリアス、でも……あれ?なんだろう心なしか頬っぺたが赤く……?





な、な、ななな何をしているんだ私はァアアア!ふくらとしたなまえの唇が震えるたびにむくむく湧き上がるこの感情、一体何なのだ、私は何がしたいのだ!

1限目の終了と同時に教室を飛び出し、なまえの元へと走った。刑部の提案は素晴らしく良いものだった、スマートフォンなんぞろくに使ったことのない私はその使い方をなまえに聞くことにしたのだ。
早速放課後にそれを実行させるべく、約束を取り付けに行けばなまえは快く返事を返した、喜びに打ち震える。やった、やったぞォオオ!
緩みそうになる表情を押し殺し、このまま授業合間の休憩はなまえの姿を網膜に焼き付けるために使おうと思い立った。そこでふと唇に目が行き、私の指先は無意識のうちに自然となまえの唇に触れていた。
ふに、と想像以上に柔らかかったそれ。驚いたらしいなまえに私自身も驚いた。身を引こうとしたようだがそんなもの許可しない、摘まんだまま食い入るように魅入る。あわよくば、あわよくばあわよくばあわよくば……できるものならそれに噛み付いてやりたい。
だが、耳障りな予鈴が私となまえを裂こうとする、時の使者が私からなまえを奪おうとする。


「おい石田、予鈴だ、さっさとお前の教室帰れそしてなまえが怯えきっている自重しろ」
「ま、孫いひひゃん!」
「貴様までもが私となまえの仲を邪魔するのか!」
「何をどう解釈したらその結論に辿り着くのだ石田」


おのれェエエ……なまえが怯えきっているだと!?そんなわけがあるか!愛し合う者同士を妬んでいるのか!フン、見苦しい。私となまえが仲睦まじ過ぎるために、友を奪われたとでも思っているのだろう、いい様だ、いっそ嫉妬に狂い死ね。同じクラスであるというだけでも羨ましいこの上ないというのに、席までもが前後の関係であるとは……。
私をどこまで苦しめれば気が済むのだ雑賀孫市ィ!今回は仕方ない、この辺で身を引いてやる、だが次はない。私からなまえを奪おうとする罪、いつか必ず残滅してくれる。

(赦さない、私からなまえを奪うなど絶対に赦しはしない!)
(やっと帰ったか、全く面倒なやつだ)
(孫市ちゃんんん、怖かったあああ!)

途中から石田視点、トイレに行ってた孫市さん。
20140619

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