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ホームルームを終えて一限目はおじゃる先生の古典、気まぐれに授業を進めるし、寝ててもこそこそスマフォやゲームをしてても見つからない。そもそも見つかっている時もあるだろうけれど、うっかり授業中に鳴ったりしなければおじゃる先生は基本放置。
テストは結構難しかったりするけれど、暗記して要点さえ押さえておけば問題はない。


「まろもこの高貴な時代を生きてみたかったでおじゃるよー」


おじゃる先生の余計なお話はいつものように聞き流し、取り終えたノートの上で無造作に転がるシャーペンを端っこに寄せる。
教室の窓から無限大に広がる青空をぼんやりと眺めていたら、スマフォがポケットの中で震えだした。
三成くんと連絡先を交換した後すぐにマナーモードにしておいて良かった、マナーモードの時は着信だけバイブレーションの設定がしてある、つまりこれは誰かからの着信だ。(マナーモードの時、メールや他の通知はランプの点滅だけ)

誰だろう、今授業中だし空気を読んでくれないパパかなあ、未だに震えているスマフォを机で隠すようにに取り出し、画面の表示を見てびっくり。
三成くんからだ、思わずスマフォを取り落としそうになったけれど、すんでのところで持ち直す。ちょっと待ってどういうことなの、私は授業中だし三成くんだって授業中のはずだと思うんだけど……。
しばらく震えていた着信が途切れ、何がしたいのかわからない三成くんに不信感を抱く、いやがらせかな?さっき私がマナーモードになってなかったことを知ってわざと電話を?それであわよくば授業中に恥をかき、先生に怒られてしまえってことなのかな。うう、ひどい。

それから3回ほど着信を知らせる私のスマフォ、いやだから三成くん!授業中だからね!出られるわけがないからね!
咄嗟にメールでその旨を伝えようかと考えたら、それよりも早く「新しいメールを受信しました」の表示が現れて、了解の文字をタップ。
開けば三成くんからだった。


差出人 三成くん
20XX/06/30 10:15
件名 なぜでない




えええ!三成くん察して!そもそも君も授業中だよね!?画面を見て固まる私、すると隣の席の孫市ちゃんが、おじゃる先生の様子を一瞥してから怪訝そうにこっちを見た。(脱線してるしもう授業は聞かなくても大丈夫そう)


「さっきから着信が続いているようだが」
「み、三成くんから……」
「は?非常識なやつだな、あっちも授業中のはずだろう」
「自習とかかな?」
「自分のクラスが自習であっても他は普通に授業、とは考えていないのかあいつは……」
「今ね、何故出ないってメールがきたよ」


それに本文を、件名のところに打ってるのがすごく気になる、慌てて打ったから間違えちゃったのかな。


「授業中だ、出られるわけがないと返してやれ」
「う、うん……」


授業中だし電話は出られないよ、三成くんの方は自習なの?と本文に載せ、送信。孫市ちゃんは相変わらず怪訝そうな顔付きのままだ、非常識な奴めと繰り返してため息。
三成くんにメールを送ってから、すっかり静かになったスマフォを机の中に入れて、こっそり孫市ちゃんと取り留めのない話しをした。さっき誘われた喫茶には行けないけど、また機会があったら誘ってね、そう言えば駅の近くに新しいスイーツのお店ができるんだってね、そこも行きたいなあ。
15分ほど経った頃だろうか、孫市ちゃんがスマフォのランプが光ってるぞと教えてくれて、恐らく石田だろうなと予想したら本当に三成くんからだった。


差出人 三成くん
20XX/06/30 10:31
件名 じゆぎようちゆうだ




「……っ!」
「どうした」


も、文字が……!咄嗟に噴き出したい衝動を堪えた、口元を手で押さえて俯くと孫市ちゃんが不思議そうに首を傾げる。何も言わずにスマフォを孫市ちゃんに渡し、表示されているメールを見て察してくれたみたい。
三成くんも授業中なのはわかった、相変わらず本文も件名のところに打ってある。授業中なのに電話をしてくる意図はわからないままだけど、その次に来た三成くんとよく一緒にいる大谷くんからのメールを見れば、いろいろな疑問がひとつずつ消える。


差出人 大谷くん
20XX/06/30 10:31
件名 なし


すまぬな、三成はスマフォをろくに扱えぬのよ。メールはおろか電話すらままならぬ、連絡先の交換はわれが指南したがゆえ、先もわれの制止も聞かずに覚えたての電話、メールをすると言って聞かなんだ……。
このメールについては三成に内密でな、既読したらば早々に削除しやれ、念の為よ。


「三成くんスマフォ使いこなせないみたい」
「持っていたこと自体に驚きだ」
「え、でも今時持ってないって方が珍しいんじゃない?」
「いや、石田は特殊だと聞いたことがある、必要最低限の私物しか持たん、と」
「そっかあ」
「多分奇跡だぞ」
「なにが?」
「石田の連絡先を聞けたことだ、恐らく石田のアドレスを知る者は、なまえと大谷以外で片手で足りるほどの数だろう」


三成くんの連絡先が喉から手が出るほど欲しい子はきっとたくさんいる、人は私のことをラッキーガールと呼ぶかもしれないけれど、そんなことはない。
だって常に三成くんからの連絡に怯えなければならないし……。授業中に電話とか、嫌がらせ紛いなこともするし。


「いい機会だ」
「何が?」
「石田に使い方を教えてやればいい、まずは小さいやゆよの出し方とか、もっと親密になれるチャンスだ」
「え、えええっ!?」
「これそこ、騒ぐでないぞ」
「あっ、ごめんなさい」


珍しく注意をしたおじゃる先生に謝りながら、声の大きさを控えめにして孫市ちゃんに抗議する。私なんかに指南されるの嫌がりそうだよ三成くん、すごくプライド高そうだし……。
渋れば渋るほど孫市ちゃんはやるべきだってごり押し、ううう、私にできるかなあ。


(小さいやゆよの前に内容は件名じゃなくて本文に打つんだよ、って言った方がいいよね)
(大谷も苦労しているんだろうな、この世話焼かせ共に)

20140604
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