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暇である。超絶暇である、やることなんにもない上にこの和室からは出ちゃいけませんって釘を刺されているから私はついに暇に殺される時がきたようである。時は戦国時代……うーん、多分その辺りだと思うんだ。

歴史が壊滅的な私にでもわかる超ウルトラスーパー有名な武将の名前がわんさか出てきて、しかもサルっていうあだ名で呼ばれていたはずの豊臣秀吉はゴリラでした。

その辺は百歩譲ってまあよしとしよう、未だに信じられないんだけど戦国時代のはずなのに日本人だよね!?と、疑いたくなる風貌の人がいたり、浮いてたり、空が飛べたり刀を6本持って戦ったり足の速さが尋常じゃなかったり火や氷や雷やとなんかよくわからないけど現代科学すらも超越したパワーを目の当たりにして気が遠くならない人がいたらちょっとこっちに来て説明して欲しい。


「ヤレなまえよ、イイ子にしていたか」
「あ、吉継さんおかえり」


すっと音もなく自動で(ここ重要)開いた障子の向こうから現れたのは夜中とか暗いところで遭遇したら絶対ちびる系の人代表の大谷吉継さん、輿とかいう変なものに乗って浮いてて数珠っていうハンドボールくらいの水晶みたいなものを従えている摩訶不思議サイキッカー。
ちなみにミイラ男のような風貌である、あとなんか目が変わった色をしていてびっくりしたけど慣れるとなんか面白いし、本人が気にしてたらアレだからその辺りは極力触れないようにしてる。今でこそもう何が起きても動じない自信があるけれど、最初は全ての物事にビビりまくっていた。懐かしい。

どういうわけか時代を飛び越えてしまって、着いた場所がこの吉継さんの私室だったのである。しかも幸か不幸かこの部屋から出れないっていうね!さっきは出ちゃいけませんって釘を刺されているって言ったけど、出させてもらえないわけではなくて、見えない壁に阻まれて物理的に出られないのだ。


「いい子だろうと悪い子だろうとどっちにしろ私はここから出られないんで、その質問は嫌味として受け取っておきますね」
「そうむくれるな、良き茶請けをぬしにやろ」
「えっ、おやつ?」
「そうおやつよオヤツ、ヒヒ、全部ぬしにくれてやろ」
「いえーいやったね吉継さんだあい好き!」
「ヒヒッ、例え嘘でもそんなことを口遊ぶのはなまえだけよ」
「そうなの?あ、でも嘘じゃないよ好きなのはほんと、だって吉継さんってば得体の知れない私にすっごく良くしてくれるし親切だし、暇があれば構ってくれるじゃないですか、うん好き」
「よく囀る……籠の鳥のぬしはまっこと不幸よ、だがそんなぬしが愛いと感じるわれも随分と、ナァ?」
「不幸?うーん私は不幸中の人幸いだったし、なんとも言えませんけど」
「奇特よキトク、われを好く輩などおらぬゆえ」
「そう、よくわかんないけどみんな見る目ないんですね、あっこれウマー」


とっても高そうな朱色のお盆に乗った白くて丸くてお饅頭のようなお団子のようなそれを遠慮なく頬張る、ふっこふっこしててほんのり甘くてめっちゃ美味しい、お茶が欲しくなる。


「ホレ茶も飲みやれ、喉に詰まらせるでないぞ」
「わーい吉継さんありがとうやっぱり大好きー!」
「ヒヒッ、ヒヒ」


現代に比べれば質素ではあるけれど美味しい食事に、毎日ではないけれど時々出てくるお菓子とお茶。そして常にだらだらごろごろできるのである、なんだここは極楽浄土か天国か。
テレビ、スマフォ、本という私的暇潰し三種の神器がないことだけが若干のネックではあるが、社畜だった私にとってこれ以上の贅沢はない。


「幸せ……マジ幸せ、私このまま吉継さんに飼い殺しがいい、もうどこにも行きたくない」
「……」
「吉継さん?」
「……自ら籠に戻ると申すか」
「籠?籠って?」
「いやなに、ヒトリゴトよ、ぬしはほんに……愛い、ゆえに可哀想よ、なあ」


時折不思議ちゃんを発動する吉継さんだが、私には全く言ってることがちんぷんかんぷんだった。だってわかりたくもないし、理解する気なんて更々ない。
無慈悲な社会に過労で殺されるんだったら一生ここで飼い殺しにされた方が断然いい、私は二度と生きる意味なんて考えたくないんだ。

20170920
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