地学部という何をするのかイマイチぴんとこない部活に所属した私はそれなりに平和だけれど、だいぶ地味なスクールライフを送っていた。考えれば考えるほどこんな幸せな地味ライフはなかったと思う。波瀾万丈奇想天外なトンデモライフを送るよりは何百億倍もマシである、と。地味な生活最高です。平穏万歳。
「あああ!またかよ!」
「ひ、ひひっ、ヒーッヒッヒ待てマテ、ちと待ちやれ」
「待てと言われて待つバカがどこに、おぶっ!?」
「ヒヒ、ぬしに言っておこ、われは飽いた鬼事はもううんざりよウンザリ」
「いってー!顔面から行ったじゃないですか吉継先輩のバーカバーカあほ!」
「阿呆はぬしの方よ、われの可愛いカワイイ阿呆ななまえ、ほれぶつけたところを見せてみやれ、舐めてやろ、唇か唇であろ」
「ほざけ!」
黒田官兵衛が部長を務める地学部に入ったのは、ひとえに先輩後輩の面倒な気遣いをしなくて済むと思ったからである。彼とは幼い頃からの馴染みであり家が近所でいわゆる腐れ縁、兄妹の関係性に近いゆえに遠慮は無用。
天文にも化石にも興味はなかったけれど、そこそこ楽しい部活だと思っていた。
あの人……大谷吉継先輩に目を付けられるまでは。
「退部したい、めっちゃ退部したい!」
「無理よムリ、副部長のわれの許可がなければ部長である暗の許可は得られぬからなァ」
「ぐぬぬぬ……」
ぬらりと笑った吉継先輩にぐうの音も出ない、どういうわけか私は吉継先輩にえらく気に入られたようで、毎日拷問のようなセクハラを受けている。本人はスキンシップと豪語するけれど度を超えていますから!
それから地学部はいくつかの分野があって、天文系と化石系がメインだ。官兵衛は化石系が得意分野で吉継先輩は天文系。
どっちも全然わかんないし、興味もなかったんだけど化石系は官兵衛が熱く語ってくれて止まんなくてちょっときらいになった。星の観察は星座を見つけるのがちょっとおもしろかったから、まあ、そんなにきらいじゃない。
「さて、部室へ行くとするか」
「やだやだやだ帰る!私今日帰りたい!あっそうだなんかお腹痛いので帰る!」
「ほう、腹痛か?どれわれがさすさすしていてやろ、部室に着いたら特別にわれの膝も貸してやろ」
「うわあ急に元気になってきちゃった全然お腹痛くないなあ!」
「ひひひ、そうかそれは残念よザンネン」
がっちり腕を捕まえられて、半ば引きずられるようにしながら吉継先輩に強制連行。どうせ部室に行って部活動を始めたって吉継先輩のセクハラのオンパレードなんだからほんともうめっちゃ帰りたい。
そもそもなんでこんなに吉継先輩に気に入られちゃったのか、皆目見当もつかないんだけど私なんかしでかしたんだろうか?別に何をしたわけでもないと思うんだけど。
「なまえ」
「……なんです?」
突然立ち止まった吉継先輩に、じぃっと見つめられたので見つめ返してみる。なんだろう、何か言いたそう。
「吉継先輩?」
「……(醜いわれを顔色一つ変えずに見つめ続けてくれるのはなまえだけよ、触れてもセクハラだとのたまう程度で嫌悪を見せぬ、汚らわしいとも口にせぬ、普通に接してくれるのはぬしだけ……)ひひ、手篭めにしてしまいたいなァ」
「ちょお!?怖!吉継先輩こっわ!」
「ヒッヒッ」
相変わらず何考えてるのかイマイチわかんないんだけど、すっごい楽しそう。すっごい怖いよ。今日は何するんだろう……。
オチなど……。
20160207
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