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大遅刻月蝕ネタ……というわけでもないけど一応それにちなんでいるかもわからない月ネタ。

万民を、力強く後押しするように強い日差しをさんさんと降り注いで、ある時は緩く包み込むように見守る天高く燦然と輝く太陽。まるでその化身であると比喩されるのは徳川家康、人懐っこい性格と人好きのするタチは多くの人から支持を得る。

そして、そんな太陽の恩恵を受けて静々と控えめに暗闇をほのかに照らすのは、月。主張することをせず、足下に薄らかな影を落として密やかに見ている。そんな月に例えられたのは、石田三成だったが、存外癇癪持ちであり、気の短い彼を月のようだと言うのはいささかためらいが生まれる。


「……ものの例えだ」
「そりゃわかってるけど」
「私と家康が決して相容れない存在であるという例えだ、己が儚く静々として美しいなどとは思っていない」
「思ってたら思ってたでおもしろいけどね」
「貴様私をバカにしているのか」
「してないしてない」


太陽と月が空に一緒に浮かぶことがあり得ないのと輝く同じように徳川くんと、三成が一緒にいることはあり得ない、っていう比喩ね。わかってるわかってる。
まあ宇宙に行けば一緒に浮かんでいるも同然だし、日が昇っても月がぼんやり見えてる時だってあるけどね、とは言わないでおく。
言い返せば三成はすぐ不貞腐れて不機嫌マックスになっちゃうし、そうなるとご機嫌取りも容易じゃない。


「なーんでそんな徳川くんに突っかかるかなあ」
「知らん気に食わん斬滅してやりたい」
「もしかしてみんなから頼られマックスなのが羨ましいの?三成も頼られたい?」
「羨ましくなどない!微塵もない!ふざけるな!」
「そんな怒んなくても」


キレやすいっていうか沸点が低いってこういうところ、気に食わないことを言われるとすぐ怒鳴るの。あーあそんなに歯を食いしばったら歯がダメになっちゃうよ、それにせっかくの端正な顔立ちが台無し台無し。

まあ生きてればどうしようもなく気に食わない人の一人や二人いてもおかしくないか、誰も彼も好きになれなんて、ねえ?
これ以上三成の機嫌を急降下させてもいいことはひとつもない、この話題を違う方に持っていこうと別の話題を口にしかけたけれど、私よりも早く三成が口を開いた。


「なまえ」
「うん?」


そもそもなんでこんな話をし始めたんだっけ?


「やはり貴様も、太陽の方がいいのだろう」
「は?」
「全てを包み込む太陽……あの家康などよりも私にとってはなまえの方が太陽と形容するに相応しい、だが私はどうだ、なまえにとっての私はなんだ、なんだというのだ……」
「えーと……三成?」
「どうせ、私など……」


話のきっかけなんかどうだっていい、三成は自問自答のようについて出てくる言葉を吐き出すと、鬱屈モードになってしまった。感情の起伏が激しいのも三成の特徴のひとつだ。
んー、でも私は太陽の方がいいなんて一言も言ってないんだけどなあ。それにしても私が三成にとっての太陽ってのは嬉しい、まっすぐ言われるとちょっとくすぐったいけど。


「確かに三成を月って形容するのはためらうって言ったけど、否定はしないよ」
「……?」
「先に言っておくけど私月のが好きだからね?」
「そ、それはどういう意味だ!」
「いやほら太陽って紫外線とか気になるし、暑いの苦手だし」
「……」


あれ?呆れてる?だって女子には死活問題だもの、紫外線。太陽がないと困るのは確かなんだけど、好き嫌いで言ったらやっぱり月が好き。


「個人的なイメージなんだけどね、暗い場所をぼんやり照らしてくれる月って、一人一人を月明かりで包んでくれるような気がする、太陽だと全部をまるっとまとめて包むっていうイメージなんだけど……わかるかな?」
「言いたいことはわかった」
「うん、だからね、三成が大好きってこと!月関係なくなっちゃったけど、どーでもいいや、三成だーい好きー!」
「っば、馬鹿が!ふ、ふざけるな……全く、わ、私も……その、好きだ」


昼間よりも夜の方が三成は積極的になってくれるってこともあるんだけど、それは内緒。

20150414
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