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そろそろ寝ようかなと思ってソファから立ち上がった時にそれはやってきた。インターフォンが来客を知らせたので、モニターを確認すれば玄関先にはよくよく見知った顔がドが付くほどのアップで映し出されている。顔近っ。
インターフォンのカメラを覗き込むようにしている彼がぼそぼそと何か呟いて、イライラしだしたらしくドアを蹴っ飛ばし始めたからさすがに焦る。慌てて玄関に向かい鍵とドアチェーンを外してドアを開けた。


「おっせーんですよお、またべさまをお、いつまでえ、待たせんですかってーの」
「ぎゃ」
「んー」


入ってくるなりもたれ掛かるようにして、彼もとい又兵衛さんがアルコールの匂いを撒き散らしながら突撃してきた。呂律が危うくなってきてる、相当飲んでいるらしい。普段から常識外れかと思いきや、意外と節度のある振る舞いの又兵衛さん。そんな彼が自我を見失うほどに泥酔するはずがない、セーブがきくはずの彼に一体何が。


「あンの阿呆官があ、うるさいんですよお、最近どうだって、なまえとはうまくいってるかってしつこくきいてくるんですよお」
「はあ」
「ぶぇーつにぃ?そんなこといちいち阿呆官に報告する義務なんかないですしい、人様のぷらいべえとをやすやすと話してやりたくないっつーの、うまくいきすぎて毎日楽しくって仕方がないなんてえ、絶対ぜーったい言ってやらねえんですよお」
「そ、そう、毎日が楽しくて何よりだね」
「どんな話するのか、めーるや電話の頻度、写真とかないのかってしつこくてえ、飲み代はおごりじゃあ!って言うもんだからあ、しこたま飲んれやったんれすけろお、またべさまのぷらいばしーは一切話してやりませんれしたあ、けけけ、ざまあ……」
「あはは」
「……なまえのすべてはこのまたべさまだけが知ってりゃいいんれすよお、他の木偶になまえを見せたかねえんだよお」


本格的にやばい呂律、ものすごい勢いでしゃべりだして酔っ払った経緯はなんとなく理解した。原因は官兵衛さんだったのか、それにしても又兵衛さんは酔うと殊更饒舌になるらしい、時々本音と言うかデレが混じる。
そういえば又兵衛さん、段々涙声になってない?大丈夫かな、気分悪くなってきたのかな、吐き気は?水持ってくる?横になる?


「そうやってさあ、優しいとこがいっぱいすぎてさあ、こぉんなおれだっていうのに甲斐甲斐しくてかわいいしぃ……風邪引いら時もさあ、卵粥めっちゃうまくてふうふう冷ましながら食わせてくれるし……おれ、しあわせなんれすよお……うう」
「又兵衛さん、落ち着いて」


ぼろぼろと泣き出した彼にびっくりしながらも手を引いて一緒にソファに沈む、まるで大きな子供のようにくっついてくる又兵衛さんの方が可愛い。
又兵衛さんって泣き上戸だったんだ、意外。


「っぐ、なまえ……どこにも行くんじゃねえぞ、またべさまをおいてったら、許さねえんですからあ……」
「はいはい、ここにいるから、大丈夫大丈夫」


ぐずる又兵衛さんをたしなめながら、明日になってからの又兵衛さんの反応が気になった。覚えてなかったら残念だけど、覚えてたらきっと恥ずかしがってつんけんするんだろうなあ。

20140803
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