BSR | ナノ

誰だ、この人がこんなになるまでお酒を飲ませたのは。ふらふらとおぼつかない千鳥足は滅多に見られない貴重な代物。


「わたしはよってなどいない」
「酔ってる人こそそう言うからね、語調が怪しいよ」
「のんでなどいない」
「嘘は嫌いだって言ったのは三成だよね」
「わたしをうたがうのか!みょうにのどがやけつくようなみずをのんだだけだ、こっぷのはんぶんいか……数十みりていどだ」
「それ水じゃないね、焼酎あるいは日本酒だと思うんだけど」
「そうだぎょうぶ、ぎょうぶはどこだ、あいつならわたしがのんだものがなにかわかる、ぎょうぶはどこ……うっ」
「ちょちょちょ!待って待って!戻すならトイレ行ってトイレ!」
「まてなまえ……わたしをおいてどこへ……ううっ」
「本格的に危険信号ー!洗面器!せめて洗面器取りに行かせて!ここでぶちまけられて誰が処理すると思ってんのこのバカ!」
「いやだ、おいていくな、わたし……うっ、わたしをひとり……うぐっ」
「ぎゃー!えずくのやめてー!秒読み開始させないでー!」


超高速で背中をさすってあげる攻撃、気休め程度にしかならないようだ。三成は私を羽交い締めにして全身から酒気をぷんぷん匂わせる、こっちまで酔いそう。でもさっき飲んだのは数十ミリ程度って言ってたよね、三成ってお酒弱いっけ?いやそもそも飲めたっけ?
今はもうそんなことどうだっていいや、とにかく三成がやらかしてしまう前にトイレへと連行させなければ。
ぐったりしつつも私を羽交い締めにして、時折えずいてこれまでになく最高潮に悪い顔色を窺った。ひとまず引きずるようにして狭いトイレの中に二人で入ることに成功し、吐く時はこっちにお願いね、と聞いてるんだか聞いてないんだかわからないけど一応三成に声を掛けた。


「なまえ、おまえはわたしをうらぎらない」
「うん」
「わたしをひとりにしない」
「うん」
「わたしを、すてるな、はなすな、そばにいろ、ずっとだ、えいごうに、なまえのいないよのなかなど、わたしは、わた、し……は」


すう。
寝やがった、言いたい放題言って私を放置プレイでしかもトイレで寝やがった!残念なことに身動き取れない体勢である、三成は普段から睡眠時間が短くて眠りが浅い。
その反動なのか、一度深い眠りに落ちてしまったらテコでも起きない、それこそ天変地異が起きようと絶対に目を覚まさないレヴェルで。私はこの体勢のままトイレで一晩過ごさねばならないらしい、三成には絶対にお酒を与えないようにしよう、絶対。
子供体温並みに温かい三成に包まれながら誓ったある初夏の夜。

20140803
 / 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -